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少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第十二話:傾かぬ
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生かけても絶対に起こり得ないな、そんな奇怪な出来事は」


 言葉を聞いただけでも気分が悪くなる。どれだけ元から無い食欲を、より減衰させれば気がすむ?
 そしてそんな事が心配ならば、ついでに海が砕けないかとか、空が振って来ないかとでも心配していればいい。
 そう言った気悠の類を通り越した、無用では済まないクソったれな心配なのだから。


「とにかくいい子が来てくれて安心よ。正統派ラブコメ、頑張りなさいよね」
「断る」
「あんたが頑張ってさえくれれば、あの娘だって戸籍上も我が子になるじゃない」
「マリスに戸籍は無い」


 どうやらこの母親は自分がどのような事態に脚を突っ込んでいるか、マリスがどんな目的と事情を持っているのか、全く持って理解できていないと見える。
 俺が今巻き込まれているのは、妹及びマリスによってもたらされた訳の分からない事態と、冗談では済まない命の危機であり、ラブコメ的シチュエーションでも何でもない。

 そもそも “人” では無いマリスに、恋愛感情があるとも思えない。

 ……あ、言いたい事だけ言って帰っていきやがった。
 満足そうな顔してんじゃあねえよ、こっちは余計にイラついたってのに。


「……チッ」


 心なしか香りだけは良い筈の食事も、何時もより濁った《臭い》となっている気がする。
 ちなみに昼はご飯を炊く暇が無かったからとうどんであり、小エビや野菜のかき揚げを沢山添えるらしい。
 だが、俺にとっては異臭を放つ重油モドキに囲まれた、藻の生えるプラスチックと青臭い固形物に他ならない。

 つまり不味いから食いたくない。

 ほんと、最初の頃よりもひどくなりすぎて、最初からポーカーフェイスや渋い顔で食事をしていたのが、結果的に良い方向へ傾いていると……食事の度に胸を撫で下ろしてしまう。
 (俺限定で)刺激臭を放つ揚げ物を待つ傍ら、親父が話を再開し始める。


「ところで……その堕天使と聖天使は、実際問題危険なのかね?」
「……この事態は、私達死神にとっても予想外の事態。本体成仏する筈の彼女達が、全く別の存在と成り人智を超えた力を得たとなると、何を仕出かすか分からない」
「クソ……それは、外れて欲しい推測だな」
「……私にとっても、彼女等が悪でない事を祈っている」


 現時点で可能性があるのが、キケロクロットとメープルか。そして分からないのがナーシェで、可能性が低いのがロザリンドとアイシャリアだな。
 こうして説明し大人しくしている以上、マリシエルは論外だろう。


「でだ、その堕天使と聖天使を―――」
「あのさ、パパに兄ちゃんにマリスたん。毎回分けて呼ぶの面倒くさく無い?」


 確かに一体だけ堕天使では無いから、彼女等と分けられな
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