第十二話:傾かぬ
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「自分の家だと思ってね、マリスちゃん。遠慮なんていらないわよ」
「うむ、優子さんの言うとおりだ」
「可愛い娘が増えるし、私達だって嬉しいものね」
「うむうむ、賑やかなのはいいことだ」
「なら今夜もう一人作っちゃう?」
「ごふっ!? げふっげふげほっ!!」
お袋の発言で顔を耳まで真っ赤にし、吹き出してからの咳払いで何とかごまかそうとする。俺はその会話を聞かない事にして、溜息と共にソッポを向いた。
「ひゅーひゅー! ラブーい?」
冷やかしを飛ばす楓子……馬鹿だコイツ。
「親をからかうとは良い度胸だな楓子」
「ひぇぇええ!? DV反たごふほおっ!!」
頼みの綱であるお袋も料理中で動けないと言うのに、懲りずに殴られに行くとは、やはり単なる馬鹿であった。
「……やはり私は運がいい……」
ん……?
気の所為か? 今マリスの瞳に温かいものが宿った様な……もうただの透明な瞳に戻っているし、俺の見間違いだろうか。
ほっこりできる場面では無く、寧ろ顔をしかめる光景であったのに、何故 “温かい” と言う単語が俺の中に浮かんだのだろうか?
まあ、こいつの事など人間でもないのだし分かる筈が無い。それに構っていても心労が増えるだけ。
ならば仕方が無いかと視線を背ければ―――何時の間にやら隣にお袋がいた。
「うふふ」
……本当にいつここまで来たんだ、あんたは。
しかもその視線は「何もかもわかってます」と言った、恐らくラブコメ路線で勝手に勘違いしている類のものが、確り色濃く宿っていた。
「うふふ……アンタにはヒヤヒヤさせられたけど」
「は……?」
「何時まで経っても妹離れが出来ないし―――」
「逆だ」
少なくとも俺からアイツに構っていった事は無い。
小さい頃ですら、向こうから構って欲しいと向かってくる事に、煩わしさも何も無いその素直な感情で癒されていた事こそあったが、今では口を開かば馬鹿発言なのもあって、余計に話しかける理由が無い。
この親は一体何を見てきている?
「理子ちゃんとはまーったく脈無しだし―――」
「当たり前だ」
寧ろ過ごして来た年月の中で、アイツと脈があるような出来事があったのか?
隠し事嫌いから派生する鞄による暴力の嵐に、時折発生する自分の意見の押し付け、俺自身もアイツに特に良い感情を抱いている事も無いのだし、幼馴染なのだという認識があるだけなのに。
この親はそんな関係の中に何を望んでいた気だ?
「ほら、お母さんて正統派ラブコメ好きでしょ? 禁断の愛とかかもう駄目でね、この子は妹に恋しているんじゃあないかと心配で心配で―――」
「一
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