暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第55話 レッドの町の鬼門
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〜レッドの町 ヘルマン軍司令室〜


 まるで問題なし、とその身体通りにどっしりと構えているフレッチャー。そんな中、1つの影が現れた。

「――それで、追撃はしないのですか、大隊長殿。それなりのカードは揃っている様ですが」

 現れたのは、魔人の一角、アイゼルだった。呆れた様子……とも取れる表情をしてフレッチャーを見ているのだが、フレッチャー本人はそうは思っていない様だ。ただただ、只管食べていた。

「もっちゃ、もっちゃ…… げふぅ その通りだぶー」

 唐揚げを咀嚼しながら、まるで肉塊の様な身体が声を発する。

「ぶー、ぶー。確かにカードは揃いすぎてるぶー。そして、相手も考えなしと来ているぶー? だが、無様に負けたヘンダーソンの轍をわざわざ踏むことはないのだぶー」

 そのまま、小脇に積み上げられた唐揚げを素手で掴んでは、そのたるんだぜい肉を振るわせて喰らい続ける。……この場に、弟子であるあの2人がいないのは或いは良かったのかもしれない。
 
 アイゼルが向けている視線を見なくて済んだのだから。

 
「……そう、ですか。フレッチャー大隊長殿は、慎重派、と言うわけですね」

 眼前の肉塊、醜態から ついには視線を逸らせるアイゼル。それを気にする、気づく素振りもみせないフレッチャーは意気揚々と語った。

「ぶふふふ、そうではないぶー。 むぎゅっ、もっちゃ、もっちゃ。まぐっ…… 戦力は圧倒的なのだぶー。相手は判らないみたいだがぶー。このままゆっくりと踏み潰していけば、まるで問題ないのだぶー。我が弟子たち、そして死神を筆頭に、こちら側にはまるで死角が無いのだぶー」

 もはや、咀嚼、ではなく丸呑みをしているのではないか? と言うペースで肉を喰らい続けるフレッチャー。元々ヘルマンとは極寒であり、不毛の大地とも言える。その厳しい環境だからこそ、リーザスと言う快適環境を狙い、戦争がつづけられてきたのだ。
 そんな場所で、よくもまぁここまで肥え太ったものだ、と内心 感心しかねない心境のアイゼル。が、それはあくまで言葉の綾だ。鼻を押さえて話したい気分ですらある気持ちを、抑え、押し殺しながら言葉を紡いだ。何かを得られるかもしれない、と思えたからだ。

「……数の利、と言う意味では ヘンダーソン殿にも充分あったのですがね」
「ぶふはははは!」

 肉塊が顔を歪ませて笑った。

「ヘンダーソンは、洗脳兵にばかり頼りすぎなんだぶー。ここぞで、頼れるのは、己が力と言う事をわかってなかったのだぶー」

 その己に一体何れ程の力があるというのだろう? とも思えるアイゼルだったが、それも押し殺した。洗脳兵に頼りすぎ、と言うわりには、目の前にいる兵士。死角がない、と言っていた兵士、死神、とこの青髪の少女は、なんだと
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