三十五話:目覚めと日常
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人間だとは言えない。
【相も変わらず我を敬わん奴だのう】
「ッ!」
「どないしたん、リヒター?」
「いや、なんでもない……」
今、ご先祖様の声が聞こえたような……。
今日寝たら問いただしてみるか。
「それで何であんたの声が聞こえたんだ。ご先祖様」
【ふむ、そう不機嫌な顔をするでない。我とて聞こえていたとは思わなんだ】
「……」
【疑っておるが全て事実よ】
黒い空間の中でご先祖様と話をする。
もう何年も前からこうして話しているがその度に寝不足になって居眠りをしてしまっている。
つまり俺の居眠り財布男という不名誉な名前は全部ご先祖様のせいだ!
【汝は子供の頃から良く寝る子だったではないか。それと財布なのは我と全くの無関係だ】
……そんなの嘘だ。
確かにご先祖様と出会う前と後で両親の反応が何一つ変わらなかったのは事実だがそれはただの偶然のはずだ。
後、財布の運命をどうにかしてくれたら冗談抜きでご先祖様を敬う。
どこかに埋蔵金でも残していないのだろうか。
【まあ、汝の寝坊助は置いておくとしてだ。何故、声が聞こえたのかは少し心当たりがあるぞ】
「何なんだ?」
【我の人格が覚醒仕掛けておる】
その言葉を聞いて俺は目を見開く。
ということはなく、普通にご先祖様を見つめる。
それにしても600年以上前のご先祖様なのに俺とそっくりなのは何故だろうか。
俺が女だったら多分瓜二つだ。
【もう少し驚いたらどうだ】
「別に覚醒したところで大して変わらないだろ」
【我といつでも話せるようになるのだぞ。少しは喜べ】
「ご先祖様が巨乳のおねーさんなら跳び跳ねて喜んでた」
【よし、何枚に下ろして欲しい?】
青筋が浮かび上がり一目でご先祖様が激オコ状態になったと分かったので逃走を始める。
しかしご先祖様は一瞬で回り込んできた。煌めく刃がやけに眩しい。
そしてリヒターは諦めた。
【安らかに眠れ、我が子孫】
「俺を倒しても第二、第三のリヒターが―――」
峰打ちって実は洒落にならないほど痛いのだと改めて知った真夜中だった。
【ふむ……そろそろ頃合いか。後は、せいぜい上手く踊ることだな】
彼女は一人闇の中で楽しげな笑みを浮かべるのだった。
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