18部分:第十八章
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第十八章
僕は考える。その人の心がそのまま外見を現わしたならばどうなるのだろうか、と。だがそれはある程度はわかる。人の生き方は顔に出る。
「彼女は人を襲いました。そしてその肉を喰らったのです」
「あの森の事件もそうですね」
僕はそれを聞いて言った。
「はい。その通りです」
主人は哀しそうに言った。おそらく彼は本来は優しい心の持ち主だったのだろう。
「しかし私にはそれは止められませんでした」
彼は瞑目して言った。
「それは何故ですか?」
神父が尋ねた。
「私ももう人ではなくなっていたからです」
彼は哀しい声で言った。
「彼女を妻とした時に私は生者ではなくなりました」
彼もまたクグツであったのだ。
「執事も使用人達も。この城にいる者は全て彼女の僕、いや人形となってしまったのです」
それが魔界の者の心なのであろうか。愛してくれている者をもクグツとするということが。
「しかし私はそれでもよかった」
彼は言った。
「彼女と共にいられるのだから」
彼は悲しい声のまま言った。
「私の彼女への愛は変わらなかった。例え彼女が何者であろうと」
そう、彼は奥方の魔力に心を奪われたのではなかったのだ。
彼の言葉通り彼女に心を奪われたのだ。それは最早何者にも如何ともし難いものである。
「私は自分が彼女を愛しているだけで充分だった。それが私にとって全てなのだから」
彼は一言一言噛み締めるように言った。
「しかし彼女は違っていた」
彼は哀しい目をした。
「彼女はやはり魔物だった。人を貪り食いクグツとする魔物だった」
彼の心はそれに耐えられなかったのだろう。
「私は彼女のそんな恐ろしい姿を見たくはなかった。だが彼女はそれを止めなかった」
当然であろう。それが魔物の生きる術なのだから。
「そして私は長い間それに耐えてきた。しかしもうそれも限界だった」
「そしてその時に僕達が来た」
僕は言った。
「はい。私は今日という日が来るのをどれだけ待っていたことか」
彼は微笑んで言った。
「彼女にこれ以上の恐ろしい行いを止めさせるその時が来るのを。それがようやく来たのです」
「しかし」
神父が尋ねた。
「それが何を意味するか貴方はご存知の筈ですが」
「はい」
彼はその言葉に微笑んだまま頷いた。
「それは覚悟のうえです」
主が死ねばクグツも滅ぶ。それは定めだった。
「私は既に生者ではありません。今更これ以上この世にあっても意味はありません」
彼は静かに言った。
「私の望みはただ彼女がこれ以上罪を重ねないこと。といっても魔性の者である彼女には理解出来ないでしょうが」
彼はそう言うと静かに僕の前に来た。
「これをお借りしますね」
彼はそう言うと僕の短剣を手
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