12部分:第十二章
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第十二章
「その奥方は夜早くに休まれるのですか」
「はい。僕が夕食に来る時にはもう」
「ふむ」
彼は考える顔をした。
「夜の間城の中を少し気をつけて見ると何か見えるかもしれませんね」
「といいますと?」
「具体的に言いますと起きて城の中を調べて下さい。ただし城の方に見つからないように」
「わかりました」
僕はそこまで話をすると神父と別れた。そして森へと向かった。
「待てよ」
昨日事件があったばかりである。今日行っても警官達がいて森の中を見て楽しむことは出来ないだろう。
引き返した。そして手頃な店で食事と酒を楽しむことにした。
店はすぐに見つかった。ドイツの家庭料理の店だ。質素だが美味い料理と黒ビールを堪能した。ビールも我が国のものより美味しい。やはり長年ビールに親しんでいる人達だけはある。残念なことに日本酒が飲めない僕はワインやビールを飲むがやはり自分の国のビールを贔屓にしたい。それでもこの黒ビールは最高だった。
「長居してしまったな」
僕は上機嫌で店を後にした。もう夕方になっていた。
城に帰った。だが誰もいない。門のところにある鈴を鳴らしてみた。
暫くして執事がやって来た。彼は僕の顔を見て少し驚いたようだ。
「貴方でしたか」
普段の生気の無い様子とは違う。表情に変化があった。
「はい」
僕はその様子にいささか面食らった。妙な感じがした。
「森に行かれたのではなかったのですか?」
「いえ、そのつもりでしたが」
僕はそこで自分の息がビール臭いのに気が付いた。
「まあこういうわけで。飲んでいました」
「そうですか」
彼は納得したようである。
「それではお風呂を用意しておきますので。暫くしたらお呼びします」
「これはどうも。いつもすいません」
「いえいえ、大切なお客様ですから」
彼は先程見せた戸惑いを消し僕を部屋に案内した。僕は風呂に入った後食事に呼ばれた。それにしてもこの国は酒に関しては我が国程五月蝿くはないようだ。フランスと同じく子供も酒を飲んでいる。水が悪いせいであろうが最初見た時にはかなり驚いた。あの総統は酒を飲まなかったそうだがこれはかなり珍しかったのだろう。
「で、森には行かれなかったと」
夕食の時主人も僕に森に行かなかったとことを聞いてきた。ここまでくるとわずらわしくなってくる。
しかしそれは顔には出さなかった。やはり失礼だからだ。
「ええ。気が変わりまして」
僕はフォークで猪の肉を切りナイフでそれを口に入れながら答えた。
「そうだったのですか」
主人は残念そうに言った。何故彼が残念そうに言うのか理解出来なかった。
(別に僕が森に行こうが行かなかろうが関係ないだろうに)
心の中でそう思った。しかしそれは言わなかった。
夕食を終
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