10部分:第十章
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第十章
「ラムですか」
僕は一口食べて言った。
「はい。良い肉が入りましてね」
主人は顔をほころばせて言った。やはり何処か無機質である。
「日本ではあまり食べられないと聞いていますがどうですか?」
「僕は結構好きですけれどね」
僕は答えた。
「我が国は肉を食べるようになってまだ日が浅いので。残念ながら羊にはあまりなじみが無いのですよ」
実際ヨーロッパに行って羊がポピュラーなのに少し驚いたものだ。オーストラリアではもっと一般的だった。
「そうなのですか。まあちゃんとした料理を知れば広まると思いますけれどね」
「そうですね。我々は幸い食事に関するタブーはあまりありませんので」
「ならば問題ありませんな。いずれ広まりますよ」
「だといいのですが」
どうも匂いが苦手という人が多い。僕はこの匂いが逆にたまらないのだが。これは人それぞれといったところか。
ここで僕はあることに気付いた。
「奥様はおられないのですか?」
そういえば昨夜もいなかった。
「ええ。夜はいつも早いのです」
主人は答えた。
「早いといってもまだ夜になって少ししか経っていないですが」
「まあそれが妻の生活ですので」
「そうですか」
僕はそれ以上聞こうとはしなかった。他人の、しかも女性の生活に立ち入るのも無作法だからだ。
僕は部屋に戻った。そして服を着替えベッドに潜り込んだ。
ふと窓を見る。そこには昨夜と同じ黄金色の月があった。
「相変わらず明るい月だな」
僕はその月を見て呟いた。
しかも大きい。それは窓から部屋を照らしている。
僕はベッドから出てその月を見た。漆黒の空をその光で黄金色にしている。
「そういえば月は人狼と関係があったな」
僕は昼の神父の話を思い出した。
「不思議な話だ。僕があそこへ行ったのが運命だったなんてな」
有り得ない話だ。そもそも人狼自体が有り得ないのだが。
「まあ明日も行ってみるか」
思い返すと担がれている気もする。明日もう一度よく話してみようと考えた。からかわれているのならもう相手にはしないだけだ。
そう結論を出すとベッドに戻った。そして眠りに落ちた。
その夜不思議な夢を見た。何者かに追われている夢だ。
そこは森だった。昼に入った森だ。僕はそこで何者かに追われていたのだ。
後ろを振り返る。だがそこには誰もいない。しかし誰かが追って来ているのだ。
逃げる。森を出ても逃げた。そして今泊めてもらっているこの城に逃げ込んだ。
城門を閉める。そして城の中を進んでいく。城の中には誰もいない。
城主の部屋に来た。だがそこにも誰もいない。
その時後ろの扉が開いた。そして僕を追って来ている何者かが入って来た。
それは巨大な狼であった。金色の毛に全身が包
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