3部分:第三章
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てその襖にも手をかける。
「この向こうに何がいるかいないのか。賭ける?」
「いるかもね」
「ひょっとしたら」
「そうだね」
僕も含めて仲間達はあえてこう言うのだった。かなりというか完全に冗談で。
「じゃあ私はいないと思うわ」
妙子だけがそちらに賭けた。
「それでいいわよね」
「うん、それでいいよ」
「じゃあいるかどうかは」
「これでわかるわ」
彼女は自分の言葉と一緒に襖を引いた。そこにいるのは。
「勝ちね」
彼女は向こうの部屋を見てにこりと笑う。そこには誰もいなかったし何もなかった。しんと静まり返った部屋があるだけであった。
「私のね」
「そうだね」
「じゃあ一人あたりビール一本ってとこで」
「有り難う」
話はそれで終わりであった。何もない部屋のかわりにビールがあった。それだけだった。
彼女は笑いながら襖を開けていく。その向こう側に誰もおらず何もいないのがわかっているから。けれどひょっとしてあの時襖の向こうに何かがいたらどうなっていたか。ふとそう考えたりもした。けれどそれはあえて言わないことにした。にこやかに笑っている彼女に対しては。そのままにしておいた。
襖 完
2007・12・23
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