第四章
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しかしだ、それでもだった。
朝起きてだ、オーストンは自分が生きていることを確認してからテューダーに問うた。
「生きてるな、まだ」
「そうですね」
「カンタレラは入っていなかったな」
「ですね、じゃあ銃殺ですか」
「朝にするからな、銃殺は」
「そうですね、それじゃあ」
「いよいよ覚悟を決めるか」
あらためてだ、オーストンはテューダーに言った。
「そうしような」
「わかりました、イギリス軍人らしく」
「胸を張ってジョークの一つでも飛ばしてな」
「死にますか」
こんなことを話して覚悟を決めた、すると。
やけに階級の高そうな、大佐か中佐と思われる男が二人の獄の中に従兵を連れて入って来た。二人はいよいよこれで終わりかと思った。
だが、だった。その将校はまず名乗ったのだった。
「私がジュゼッペ=デル=シリアーニ中佐だ」
「どうも、スティーブ=オーストン大尉です」
「リチャード=テューダー少尉です」
二人共名乗って返した。
「じゃあ行きますか」
「これから」
「行く!?何処にだ?」
シリアーニはややたどたどしいイタリア語で応えてきた二人に目を瞬かせて返した。
「君達は暫くここにいるのだが」
「えっ、銃殺にならないのですか」
「違うのですか?」
「銃殺?君達は犯罪者なのか?」92
シリアーニは二人に今度は怪訝な顔で返した。
「そうだったのか?」
「そのつもりはないですが」
「悪いことをしたことがないと言えば嘘になりますが」
「しかし犯罪までは」
「記憶にありません」
「そうだろう、別に君達は銃殺にならない」
シリアーニはこのことは強く保障した。
「そのことは断っておく」
「では中佐は何故ここに」
「ここに来られたのでしょうか」
「他でもない、君達に謝罪をしに来たのだ」
だから来たというのだ。
「申し訳ないことをした」
「謝罪!?」
「謝罪とは」
「君達に昨日出した夕食だ」
「あの豪華なですか」
「とんでもない位のご馳走がですか」
「ご馳走!?とんでもない」
シリアーニはここでまた驚いて言った。
「あれは兵士の食事だ」
「えっ!?」
二人はシリアーニの今の言葉にだ、仰天して問い返した。たどたどしいイタリア語が動転したせいで英語になっている。
「中佐、今何と」
「何と仰言いました!?」
「あれが兵士の食事というのですか」
「まさか」
「いや、そのまさかだ」
シリアーニは英語で返す二人に自分も英語で返した、今度は彼がたどたどしくなっている。
「あれは本当に我が軍では兵士の食事なのだよ」
「まさか、あれで」
「兵士の食事なんて」
「あんなに豪勢なのに」
「嘘みたいですよ」
「何でこんなことで嘘を言うんだ」
シリアーニは驚き続
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