第一章
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捕虜の食事
スティーブ=オーストンはイギリス空軍のエースだった、階級は大尉でだ。スピットファイアを駆ってアフリカの空を飛んでいた。
士官学校を優秀な成績で卒業してだ、空軍でエースとなったのだ。騎士の称号も持っており社交界でも人気があった。
だが今はだ、愛機を撃墜されて。
捕虜となった、それで同じく捕虜となったリチャード=テューダー少尉と共に捕虜を収容する牢獄の中に入れられていた。
そこでだ、テューダーは俯いてオーストンに言った。
「あの大尉」
「何だ?」
オーストンは意地で顔を上げつつテューダーに答えた。
「結婚しているか、か?まだだ」
「私はしてます」
「そうか、よかったな」
まずはイギリス式ジョークからだった。
「奥さんは大事にしろよ」
「はい、わかりました。ただ」
「その奥さんとの感動の再開もだな」
「これから次第ですよ」
「我々の運命はだ」
「相手次第ですね」
「そうだ、イタリア軍のだ」
他ならぬ彼等のというのだ。
「凶悪な枢軸軍の一角のな」
「連中私達をどう扱うでしょうか」
「そうだな、カンタレラをご馳走になるかもな」
オーストンはここでもジョークを出した。
「美味いかどうかな」
「カンタレラってあの」
「ボルジア家の毒薬だ」
「あれ本当にあるんですか?」
「さてな、だが本当にあればだ」
その時はというのだ。
「我々にご馳走してくれるかもな」
「紅茶に入れてですか」
「いや、コーヒーだ」
オーストンはあくまでジョークにこだわる。
「これはドイツもだがな」
「どっちもコーヒー派ですか」
「日本軍だったらお茶が出ていた」
「そう思うと太平洋に行きたかったですね」
「そうだな、あっちはアフリカ以上に負けているみたいだがな」
「ロイヤル=ネービーがですね」
「太子殿下は海の中だ」
戦艦プリンス=オブ=ウェールズだ。レパルスと共に帝国海軍航空隊の爆撃を受けて沈められてしまっている。
「マレーも失った」
「確かにアフリカ以上に酷い負け方ですね」
「そうだ、それで飲むお茶は美味いだろうな」
「最高に苦いでしょうね」
「失恋よりもな」
とかくだ、オーストンはジョークにこだわっていた。捕虜になった現状を何とか自分で奮い立たせたいからだ。
「かえってカンタレラの方が甘いかも知れないぞ」
「そういうものですか」
「とにかくだ」
「はい、これからの我々は」
「イタリアさんの胸三寸だ」
それにかかっているというのだ。
「君が奥さんとの幸せな時間を過ごせるかどうかもな」
「大尉が結婚出来るのも」
「それからだ」
「イタリアさん我々をどうしますかね」
「実際どうなるかわからない」
これ
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