第三章
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その言葉はだ、すぐに出されたものだった。信長に対して。
「竹千代殿を見捨てられては当家が天下に盟友を見捨てたと思われます」
「それは恥じゃな」
「武門の」
まさにそれだというのだ。
「そうなります、それに」
「それにか」
「徳川家を滅ぼした次は当家です」
「武田の矛先はな」
「間違いなく来ます」
それは火を見るより明らかだというのだ、武田家が徳川家を滅ぼした後織田家に全力を、向けて来ることは。
「徳川の兵と領地まで手に入れたうえで」
「それは相当な強さじゃな」
「今でこそ当家の方が遥かに上ですが」
「石高も兵の数もな」
「はい、しかし徳川の石高と兵を加えられると」
そうなってしまうと、とだ。丹羽は信長に答えた。
「我等にはまだ及ばずとも」
「より厄介な相手になるな」
「はい、ですから」
「ここは竹千代を助けてか」
「武田家と雌雄を決すべきかと」
「わかった」
ここまで聞いてだ、信長は確かな顔で頷いた。
そしてだ、丹羽にあらためて言った。
「出陣じゃ、竹千代を助けに行くぞ」
「さすれば」
「兵糧と武具を用意せよ」
信長は丹羽にこのことを命じた。
「そして鉄砲も」
「畏まりました」
丹羽は淡々として信長に応えた、そしてだった。
信長は大軍を率いて家康の救援に向かった、だが。
その兵糧は充分にあり武具も充分にあった。その中でも鉄砲が目立っていた。
その様子を見てだ、佐久間信盛は滝川一益に言った。
「こうしたことをさせるとな」
「はい、やはり」
「五郎左じゃ」
「兵糧や武具を用意させたら」
「猿も得意じゃがな」
武具や兵糧を用意することはというのだ、羽柴も出来るというのだ。
「それはな。しかしじゃ」
「それでも」
「五郎左は確実にしてくれる」
「猿と同じだけ見事に」
「それが出来るからな」
だからこそというのだ。
「五郎左はよい」
「欠かせない御仁ですな」
「わしはずっとあ奴を見ておるが」
それも長い間だ、織田家の中において。
「あ奴がいてくれてよかったと思っておる」
「織田家に」
「わしや権六はおらずとも何とかなる」
織田家の武といえばという自分達がいなくともというのだ。
「そうした場でも戦って勝っておるな」
「当家は」
「うむ、だからそれは出来るが」
しかしというのだ。
「五郎左はおらぬと駄目じゃ」
「織田家にとって」
「あ奴がおってこそ織田家は十分に動けるのじゃ」
確かに派手ではないがというのだ。
「あ奴は欠かせぬわ」
「ですな、まことに」
滝川も佐久間の言葉に頷いた、とかく丹羽はだ。
誰もが織田家にとって欠かせないと思っていた、とかくあらゆる時にだった。
信長は丹羽と話し彼を働かせた
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