第一章
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米
梶本勇悟は米問屋の息子だ、その為に。
米には詳しい、それは戦争で軍に入っても発揮された。
「この米は長野だな」
「おい、そうだよ」
「その通りだよ」
周りはその飯を食ってまさにそうだと当てた彼に驚いて答えた。
「これ長野のな」
「そこからの米だよ」
「長野の上田だな」
ただ長野というだけでなく細かい場所まで言ってみせた、碗の中の飯を箸で食いつつ真剣な顔で兵隊仲間に答えた。
「これは」
「よくそこまでわかるな」
「飯食っただけで」
「本当に米のことならな」
「何でもわかるな」
「ああ、家が米問屋だからな」
それでとだ、勇悟は仲間に答えた。
「こうしたことはわかるさ」
「米のことならか」
「何でもわかるか」
「米を扱ってる商売だから」
「それでか」
「そうだよ、店には日本中から米が来てな」
そしてというのだ。
「その米いつも食ってるんだ、だからな」
「どんな米でもか」
「何処の米かわかるか」
「凄いな、本当に」
「流石って言うべきか」
「他のことはともかく米のことならわかるさ」
勇悟は仲間達にこうも言った、その上田の米を炊いた飯を食べつつ。
「軍隊にいてもな」
「まあここは戦争するところだけれどな」
「実際今我が国は戦争してるからな」
「亜米利加とも英吉利ともな」
「支那ともまだやってる」
「あちこちとやり合ってるからな」
「ここはまだ平和だけれどな」
仲間の一人がこう言った、彼等は今は日本の館山の飛行場にいる、勇悟はこの飛行場の整備兵としているのだ。
その彼等がだ、言うのだ。
「サイパン陥ちたからな」
「本土決戦か?」
「そんな話も出て来たな」
「ここも忙しくなるな」
「近いうちにな」
「そうなるかもな、しかしな」
勇悟はここで仲間達にこうも言った。
「人間飯がちゃんと食えてるうちは大丈夫だよ」
「勝てるっていうんだな」
「そう言うんだな」
「ああ、戦えてな」
そしてというのだ。
「勝てるさ」
「人間食ってるうちは戦える」
「戦えるなら勝つことも出来る」
「そういうことか」
「人間まずは食うことなんだな」
「少なくとも今はまだちゃんとした米で飯を炊いて食ってるだろ」
勇悟は実際に今もその上田の飯を食べつつ話した。
「じゃあまだ大丈夫さ」
「そういうことか」
「食えてるなら戦える」
「そして勝てるか」
「そうさ、まあ食おうぜ」
こう言ってだ、彼は仲間達に飯を食う様に勧めた、そして彼自身も食うのだった。
とかく勇悟は米のことならどんな米でも当ててみせた、それが外れたことはなかった。それはカレーを食っている時もだった。
「今日は和歌山の米か」
「そうだ
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