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八百屋の前
第二章
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 そうして話してだ、少しだけ寝て朝にはホテルを出た。静はホテルを出た時に俊彦に対して笑顔で言った。
「昨日は楽しかったわ」
「いい夜だったね」
「また会いたいわね」
「僕もだよ、じゃあ」
「再会を願って」
「今日はこれで」
 二人は微笑み別れた、そして。
 この日はそのまま別れた、静は家に帰って着替えて夜を終えた。
 それから数日後のことだ、ある街の商店街に。
 何年も着たグレーのあちこちくたびれたジャージを着た眠そうな目の男がサンダルのまま歩いていた、目は起きたてなのかぼうっとしている。
 下ろした髪もぼさぼさで外見は全く無頓着な感じだ、その彼がだった。
 商店街の中にある八百屋の前に行った、そこで頭に被りものをしていて古いエプロンを着たやはり古いジーンズを履いた化粧っ気のない女にだ。
「おばちゃん、いいかな」
「お姉ちゃんよ」
 すぐに返事が返って来た。
「まだ二十四で結婚もしてないのよ」
「そうなんだ」
「そうよ、それで何が欲しいの?」
「柿」
 お互いに顔をあまり見ずのやり取りだった、男はぼうっとしていて女は店の仕事をしているからだ。
「柿二個頂戴」
「柿だね」
「うん、それ頂戴」 
 こう言ったのだった、その八百屋の女に。
「幾ら?」
「一個百万円だよ」
「百円?」
「消費税込みだよ」
 それを入れての百円だというのだ。
「それでいいね」
「あいよ」
 男は今もぼうっとした顔で返した。
「それじゃあね」
「はい、これね」
 女は金を受け取ってから柿を差し出し男は受け取った、この時に。
 二人はようやくお互いの顔を見た、すると。
 最初にだ、女の方がだった。
 男の顔を見てだ、眉を顰めさせて。
 そのうえでだ、こう言ったのだった。
「あんたまさか」
「?そう言うあんたも」
 男の方も気付いた、ここで。
「まさかと思うけれど」
「あの夜の」
「静さん!?」
「俊彦さん!?」 
 お互いの名前も呼んだ、ここで。
「確かビジネスマンって」
「経営に関わってるって」
「だから八百屋の経営になのよ」
「ビジネスマンだよ、まあセールスマンっていうけれど」
「あの、それで昨日は」
「今日は休みで。ずっとさっきまで寝ていて」
 ついついお互いの事情を言ってしまった。
「何ていうか」
「こんなところで会うなんて」
「思わなかったよ、というか」
 俊彦は今の静を見つつだ、しみじみとして言った。
「八百屋さんだったんだ」
「そこの娘なのよ」
「そうだったんだな」
「そういう意味でね」
「経営に携わっていたんだ」
「嘘は言ってないわよ」
 静は気恥かしそうに顔を赤らめて俊彦に話した。
「少なくとも」
「まあそれはそうだね」
「そう言う貴方は
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