第七章
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しっかりと動いている、五本共。
右足もそうで左足もだ、踵もしっかりとあり。
足首を回しても動く、床を踏んでみてもだ。
しっかりと人間の足の感触がある、それでだった。
真司は喜びながらもいぶかしんでだ、百合に問うた。
「昨日のあれは何だったんだ」
「何だったのかしらね」
妻もこう言うばかりだった。
「本当に」
「昨日は馬の足だったのにな」
「それは一日だけで」
「また人間の足に戻った」
「おかしなことがあるわね」
「おかしいにも程があるだろ」
真司はこう言うばかりだった。
「昨日の今日なんてな」
「芥川の小説だとずっとだったのにね」
「だから主人公も苦しんだんだがな」
「あなたは一日だけ」
「これはこれで訳がわからないな」
つまり理不尽だというのだ。
「本当にな」
「そうよね」
「まあけれどな」
「それでもよね」
「人間の足に戻った」
「そのことは喜んでいいわね」
「というか嬉しいぞ」
既にだ、そうだというのだ。
「本当にな」
「そうよね、訳がわからない事態だけれど」
「ああ、しかし昨日は飲んだからな」
喜びの後でだ、真司は重くそれでいて激しい頭痛を覚えた。それでこうも言った。
「二日酔いだ」
「ええと、まだ五時だから」
真司は飲んだら朝は早いタイプだ、喉が渇いてついつい起きてしまうのだ。そして百合は朝食を作るので元々この時間に起きている。
それでだ、夫にこう言った。
「もうお風呂入る?」
「風呂に入ってな」
「お酒抜いてね」
「そしてだな」
「会社に行きましょう」
「ああ、この調子だとな」
その鈍く痛む頭痛に苦しみつつの言葉だ。
「会社に行っても仕事にならないからな」
「だからね」
「酒を抜いてな」
「会社に行きましょう」
こう話してだった、そのうえで。
真司は人間の足で歩いて風呂場に向かいまずは風呂に入った、そこで酒を抜いてから朝食の場に向かうと。
真一郎にだ、足を見られてからこう言われた。
「戻ってるじゃねえか」
「この通りな」
「よかったな、親父」
息子は笑って父のそれを祝った。
だがそれと共にだ、こうも言ったのだった。
「しかし何で昨日は馬の足だったんだろうな」
「俺も知りたいよ」
真司は口を尖らせて息子に言葉を返した。
「何て理不尽な話だ」
「全くだな」
「一日で戻ってよかったけれどな」
「それでも酷い状況だったな」
「もう沢山だ」
馬の足になるのはというのだ。
「やっぱり人間の足は一番だ」
「本当にそうだな」
「全くよね、まあとにかくね」
百合がキッチンから言って来た。
「御飯食べて」
「ああ、今日もな」
「お仕事頑張ってきてね」
人間の足に戻って風呂で酒
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