3部分:第三章
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第三章
「納得してやるぜ」
「それでいいんだよ」
「それでだよ」
相変わらずの態度でまた言ってきた。
「何だい?」
「これ、解いてくれねえか?」
蛇になった帯を解くように言ってきた。
「いい加減苦しいんだけれどよ」
「解いて欲しいんだね」
「そうだよ」
ふてぶてしい様子は健在だった。それにおそのは内心腹を立てていた。それで少し意地悪い顔をして亭主に対して言うのであった。
「じゃあそれでいいけれど」
「じゃあ早くしろよ」
「条件があるね」
こう言うのである。
「条件がね」
「条件!?」
「そうだよ」
そしてまた言ってきた。
「あんた、もう博打を止めるんだね」
「何だって!?」
「それで毎日早く帰る」
続いてこう言うのだった。
「それを守るんだね。いいね」
「何だよ。もう博打はするなってことかよ」
「そうだよ」
またきっぱりと告げたのだった。足元に転がっている亭主に対して。
「それを約束してくれるんならいいよ」
「馬鹿を言えっ」
当然聞く筈がなかった。一言で言い返す。
「俺が博打を止めたらどうなるかわかってんのかよ」
「どうなるんだい?」
「死んじまうよ」
これが反対の根拠だった。
「そんなことになったらな。だから駄目に決まってるだろ」
「じゃあ嫌なんだね」
「当たり前だ」
やはりこう答えた。
「何があってもそれだけはするかよ」
「何があってもかい」
「死んでもしねえ」
こうまで言い切ってみせた。
「何があってもな」
「わかったよ。何があってもなんだね」
「そうだよ」
また言い切ってきた。
「それだけはしねえからな」
「そうかい」
「そうだよ」
またしても言い返す。
「何があってもだ。何度でも言うぜ」
「わかったよ」
おそのは一旦亭主のその言葉を受けた。
「御前さんのその心意気をね」
「わかったら早く解け」
本当にふてぶてしい。しかもそれを隠そうともしない。
「いいな」
「わかったよ。その前に」
「何だ?」
「顔を上にあげてみなよ?」
こう亭主に言うのだった。
「そのままね」
「上にだって?」
「それでも言えたらいいよ」
おそのは笑っていた。闇の中で凄みのある笑みを浮かべていた。そのうえでの言葉だったのでこれはかなり凄みのあるものだった。
これには甚平も何か得体の知れない恐怖を感じた。その恐怖にも誘われて言われるがまま上を見上げる。するとそこにあったのは」
「なっ・・・・・・」
「どうだい、御前さん」
勝ち誇ったおそのの声が甚平の耳にも入って来た。
「これでも言えるかい?」
「うう・・・・・・」
呻くだけで声が出ない。何故なら丁度頭上に蛇の頭があったのだ。しかもとてつもなく大
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