3部分:第三章
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きな口を開けて今にも彼を頭から飲み込もうとしていたのだ。これでは声も出ないのも当然だった。
「さあ、どうするんだい?止めるかい?」
「止めなかったらどうなるんだ?」
彼は女房にこう問うた。あえて止めなかったら、と言ったのだ。
「その場合は」
「わかってると思うけれどね」
またおそのの勝ち誇った声が聞こえてくる。
「御前さんが一番ね」
「じゃあこのままぺろりか」
「蛇に飲まれるのがいいか博打を止めるのがいいか」
二択であった。
「さあ、どっちだい?」
「ちっ」
その言葉に答える前にまずは舌打ちしたのだった。
「わかったよ」
実に忌々しげだがこう答えてきた。
「止めるよ。止めればいいんだろ」
「そういうことだよ。止めればいいんだよね」
「流石に俺も食われたくはないさ」
そういうことだった。誰でも食べられたくはない。食べられる位なら、というわけだ。それで甚平もこう答えたのである。もっとはっきりと言えば答えるしかなかった。
「だから。それでいいさ」
「じゃあそういうことだね」
おそのが満足した笑みを浮かべると蛇はするちと甚平の身体を離れておそのの服に戻った。そうしてすぐに普通の帯に戻ったのだった。
こうして甚平の博打はなおった。それと共におそのの癇癪もなくなりそれと共に帯が蛇がなくなるようなことはなくなったということだ。江戸時代浅草に残っている話である。江戸っ子の女房というものは何処までも癇癪が強くそれが蛇となったということであろうか。
蛇帯 完
2008・5・28
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