第十一話:混入せし概念
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、アイツは家族と共に絶賛東京観光中。
助けを望める訳が無い。
「じゃあ、服どうしよっか?」
「どうするも何も、無いなら用意する必要は―――」
「ならワシが何とかしよう。ワシが買ってやる」
「「「ん?」」」
唐突に聞こえた第三者の、低く鈍い声に振り向き、俺と楓子とマリスの三人の声がハモる。
後ろに立っていたのは―――――羆親父……では無く我が屋の大黒柱、吉岡京平であった。
「親父……腰は?」
「優子さんのお陰でな」
「え? でもパパもママもさっきまでいなかったような?」
「それはね、楓子。ここじゃあ狭いからって境内近くの小屋まで行ってたのよ。無言で出て行ってごめんね?」
後ろからお袋も姿を見せる。
……なるほど、居なかった訳はそういう事だったのか。
「ねえパパ! あたしは! あたしには!」
「何だ楓子? お小遣いの前借りがしたいのか?」
「ぶー……ケチぃ」
如何やら楓子は、この父親が娘にはそれなりに甘いと錯覚しているらしい。何時も助かっているのはお袋のお陰だと言う事を、都合のいい様に捻じ曲げているのだろうか?
何れにせよ、思い込みで事実を変えられるほど、この男は甘くは無い。
「だが、服を買う前に話がある。少しいいかね?」
アレだけ敵意を向けていたマリスへと、今は子供へ掛けるような穏やかな……とは言っても形相で何時も泣かれたり気絶されるのだが、とにかく柔らかい雰囲気で聞いた。
無表情ながら、マリスも頷いた。
そしてお袋が何が嬉しいのか、楽しげな様相で手を叩く。
「じゃ、丁度お昼だしご飯食べながらにしましょ」
……またいつもの悪夢の時間を過ごしながら、悪夢の会話を聞く羽目になるかと思うと、俺は何時もより五割増しで食欲が衰えて行く気がする。
それは決して、気の所為では無いだろう。
せめて話はプラスへ動くようにと、俺は何にとは言わず祈りながら、ダイニングキッチンへと足を進めた。
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