第十一話:混入せし概念
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ろを向いたまま声を掛けた。
「第二ボタン解禁までなら良い。だが服自体は全部着ろ、下着もだ。じゃなけりゃ今すぐにでも、力付くで追い出す」
「……分かった、服を着る」
暫くデコ助の唸り声とマリスの衣擦れの音だけが聞こえ、少ししてから振り向いてみれば、ネクタイを傍に置き黒い上着を脱ぎ、シャツの第二ボタンまで開けた大胆な、しかし先に比べれば大袈裟なぐらいマシになったマリスが、無表情なままでパタパタ手を使い仰いでいる。
何故、楓子のあんな見え見えな嘘に引っかかったのか、俺は理解できず暫し疑問に思った。
……が、考えてみれば、他五人は体が如何に人外であろうと、中身は元々人間なのに対し、この殺戮の天使マリシエルは体も人外なら中身も人外。
人間にとっての常識なんぞ、有って無いような物だろう。
……あのバカがそこまで考えて、服を脱げと促したとは考えにくいが。比喩でも何でもなく “馬鹿” なんだから。
「兄ちゃん兄ちゃん酷いじゃん! さっきの衝撃で飛んじゃったんだけど!」
「何がだ」
「マリスたんの下着の色! お陰でムニュムニュで真白な肢体しか覚えてないんだけど?」
「ならもっと忘れとくか、マリスの事と言わず」
「質問じゃなくて断言系!?」
楓子の所為で湧いてきた変態行為の数々に、もう一々打撃を叩きこむのが面倒臭く、俺は手刀だけ鼻っ柱にかまして、ゴロリと寝っ転がりテレビを付けようとリモコンを取る。
つけてみれば当然の事ながら、バラエティ番組が映り出した。先のいざこざのお陰なのか、開始を持つこと無く見れる。
(地味に感謝したくない恩恵だな……)
他者を笑わせる事を目的としたおかしな会話を耳に入れながら横目で見れば、マリスもテレビを齧りつくように見ている……だが、その顔はやはり無表情で、楽しいのか詰まらないのかが分からない。
……それにしても暑そうな服だ。元の服もベルトがジャラジャラしていて真っ黒で、もう見るからに汗が噴き出て来るような暑苦しさがあったが、今は何とかちょっとは本人的にどうかは兎も角、第三者的には解消されている。
まあ、恐らく本人的にはまだまだ暑いだろうと俺は思う。
なにせ楓子が抱きついて、更にじゃれついているのだから。到底涼しかろうとは思えん。
「楓子、服貸してやったらどうだ? そんな体温を上げる事が目的みたいな服じゃあ無く」
「無理。だって頭半分違うもん。兄ちゃんのなら良いんじゃない?」
「俺は頭一つ以上違う。そしてその前に男だ」
「……どうせなら涼しい方がいい。麟斗のなら、着てみたい」
「ぬかすな阿呆」
馬鹿が二人に増え、頭痛の種もよりました所為で、俺は痛みで顔をしかめた。服の件ならせめて理子がいればよかったが
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