第十一話:混入せし概念
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だからと言って、承諾するのは御免だ。
「曖昧なままの《婚約》にしても、これからにしても……俺達だけでは決められねえ」
「ん! パパとママに説明する必要があるもんね!」
「……分かった。準備が整うまで、この家で待つ。それぐらいならば、居ても良いと思う」
「ああ、勝手にしてくれ」
それだけ言って俺は立ち上がり、自分の部屋へ向かうべく襖を開け、居間から廊下へと出る。
「待ってよ兄ちゃん! 何処行くの?」
「自分の部屋だ。宿題をやらねえとな」
楓子に呼び止められ訳を放すと、何が言いたいのか眼を皿のように丸くしやがった。
「……な、何で宿題なんかするの? マリスたんがいるんだよ? マリスたんが座って飲み物のんでいるんだよ? 本物のマリスたんなんだよ?」
「なにも出来ないなら、今出来る事をやるだけだ。そんなにおかしいか?」
「何でファンタジーからわざわざ逃げるの? 世の中には勉強よりも大事な事がいっぱいあるんだよ? 兄ちゃん」
途中でしたり顔に変わり、無い胸を堂々張って楓子は言う。要するにこの異様な雰囲気に浸っていたいだけ。時間の無駄にしかならないのは明白だ。
目標が高過ぎてそこへ届かせるのは無駄だと分かりつつも、しかし身にはなるからと努力する事は俺にもあるが……やる気すら起きない、身にもならない事を、ダラダラを続ける趣味は生憎とない。
それに、勉強より大事なモノがあるとも言われたが、それぐらい言われずとも分かっているし、勉強が全てだと断言する奴なぞ国内にだって数えるほどしかいないだろう。
この世の中に、唯一絶対の物など存在はしない。
それでも―――――
「道の見えない波乱万丈よりも、確実に道標のある日常の方が、俺にとっては大事なだけだ」
今宿題を終える事よりも、頼り無く手段を模索する方が、大事だとは到底思えないのだ。
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午前十一時二十分頃。
有る程度宿題を終えてダイニングキッチンへと降りるが、整体外科から帰っていないのか両親はいない。
となると、次に向かう先は居間だ。
マリシエルと楓子が居るが、彼女等に様がある訳ではない……テレビ一台置かれているからだ。今は昼近くだし、それなりに暇潰しになるバラエティーも始まっている筈である。
仲に居る二人を無視する算段を立て、俺は襖に手を掛けて軽く引いた。
「イヤァ〜〜〜ン可愛過ぎるよマリスたぁ〜〜〜ん? もっとクネクネ踊って見せろ゛ぼうっ!?」
そして楓子の後頭部へ膝蹴りをかます。
別にやっている事がスキンシップなだけなら俺も引っ張ってどかせたし、気持ち悪い声を上
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