第十一話:混入せし概念
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――――言い表せぬ “不安” が脳裏に過る。
そのヒヤリとした “予感” が濃く通った首元に右手を持って行って、それを再び前方へと振りだしながら、左手もまた前に出し同時に振り降ろした。
「っ!」
「……協力を断るなら殺―――――えっ?」
「で、でたーーー! 本物だーーーーーっ! これぞマリスたんの……ってアレ?」
次に感じたのは、僅かに両手の皮膚へ走る余りに身近で余りに奇妙な感触と、鉄の様な堅い音と髪の毛の様な柔らかい音が『同時に聞こえる』と言う余りに奇天烈な現象だ。
一体俺は何に触れたのかと見てみれば―――驚くべき事にマリスの後ろで括られた尻尾状の髪束が、ニュルリと延びて俺の物まで届いていたのだ。
しかも先端近くは反っくり返ってテーブルの上に乗っているのに対し、根元部分はテーブルの下に潜り込んでおり、よしんば髪の毛を自由に伸縮できるとしても、伸ばすだけでは到底起こり得ない無い光景でもある。
俺はその常軌を逸した現状に、僅かに目を見開く……だが、それは何やら話しかけていた楓子と、物騒な事を口に出したマリスも同じだった。
それを見ていると、何だか苛立ちが募ってくる。
何しやがったんだ? 今。
「……聖天使の時も、前の時も今も……途轍もない反応……」
「御託はいい、何しようとした」
「それは私から説明するよ兄ちゃん! ウォッホン……これはその名もマリスたんの能力の一つ【鋼糸鏖陣】! マリスたんは髪の毛に魔力を通す事により自由自在に操れて、しかも一本一本を強靭な刃に変える事も出来るのだーっ!」
ああ、そこに散らばった髪の毛は魔力仕込みなのか。……刃にも変えられるとは、危ないなその髪の毛。
迂闊に振れていたのに運が良かったってとこか、俺は。
「……音もなかったのに、叩き落としてしまえるなんて……麟斗、あなたは何者?」
「俺が知るか」
理屈も通りも成っていない投げやりな言葉だが、生憎此方にはこれ以外返せる言葉が無いんでね。
「……決めた、やっぱりここに居る。麟斗を《婚約者》にして見せる」
「あのな……ここに居られると迷惑だってのが分からないのか?」
「……考え得るだけでも、あそこで拳を振り上げていた迫力ある男性と、特殊さが垣間見えた麟斗……これ以上に、優秀な人材はいない」
「うんうん! その通りだよマリスたん! なってったってあたしのパパは無双級! それに兄ちゃんは世界一なんだからね!」
相変わらず勝手な事を抜かし続けやがる……どれだけ危険を招いているかなんざ、理解できていないんだろうな、楓子の奴は。
だが、力付くで追い出すにしても基礎で負けているし、堕天使の羽を使って戻って来てしまうか。……
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