夫を救った妻の話
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去った。後には肝を取られ仰向けに絶命している壬と真っ白な顔で震えながら立ち尽くしている陳だけが残されていた。
翌日陳は夫の亡骸を棺に入れるとその仙人のいる宿に向かった。夫の仇をとる為だ。
「そうか、やはりな」
仙人はそれを聞き苦い顔で呟いた。
「あれ程の妖力を持っておるとそう簡単には倒せぬか」
彼は唇を噛みながら言った。その顔には深い皺が刻まれていた。
「あの、どの様にすればよろしいでしょうか」
陳は何とか心を保ちながら仙人に言った。
「夫も殺されましたしあの鬼はまだ生きておりますし」
「奥方が案ざれることはありません」
だが仙人はそれに対してこう言った。
「鬼は私が必ずや退治致します。そしてご主人も生き返らせることが可能です」
「本当ですか!?」
「私は嘘は言いません」
彼は毅然として言った。
「ですから気を落ち着けて下さい。いいですね」
「はい」
彼女はその言葉に頷いた。
「まずは鬼を倒しましょう。放っておいてはさらに恐ろしいことになります」
「そうですね、あの鬼をまず何とかしないと」
「では行きましょう。おそらくまだ貴女の屋敷の側にいる筈です」
「何故おわかりに」
「気を感じるからです」
彼は言った。
「おそらく肝を食べて妖力が増大しているのでしょう。ここからでもおおよそのことがわかります」
「それ程まで」
「はい。これはかえって好都合です。わざわざ居場所を教えてくれるのですからな」
そう言う彼の顔はこれからのことを思い険しくなっていた。
「では参るとしましょう。そして禍根を断ちましょうぞ」
「はい」
こうして二人は屋敷に戻った。するとそこに隣の老婆がやって来た。
「昨夜はどうされたのですか」
老婆は心配そうな顔で陳に尋ねてきた。
「ムッ!」
仙人はその老婆を見るなり顔を殺気立ったものにさせた。
「わしの目は誤魔化すことはできんぞ」
彼はすぐにその老婆に詰め寄った。
「あの、仙人様」
陳は彼が何故その様に怒っているか理解できなかった。
「一体どうされたのですか」
「奥方お気をつけられよ。こ奴は鬼ですぞ」
「えっ、まさか」
陳はまさかと思った。
「いや、まことです」
仙人は答えた。そして手に持つ杖を振りかざした。
「あの方の仇は取らせてもらうぞ」
仙人はジリジリと詰め寄った。老婆はそれに対して酷薄な笑みを浮かべた。
「フン、気付きおったか」
それは昨夜のあの鬼の声に他ならなかった。
鬼はその本性を露わにしてきた。その顔を夜叉のものにし爪と伸ばし髪を蠢かせてきた。そして仙人と対峙した。
「行くぞ」
仙人は杖を振り下ろ
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