夫を救った妻の話
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それです」
仙人は言った。
「鏡は特別な力がありましてな」
「どの様なものですか」
「人の姿を映しますな」
「ええ」
「しかし人あらざる者、この世の者ではない者は映さないのです」
「ということは」
「はい、おそらくその女は正体を見せない為に家に鏡を置かないのでしょう。そこに姿が映らないとなるとたちどころにわかってしまいますからな」
「そうだったのですか」
壬はそれを聞いて顔から血の気が引いていくのを感じていた。
「事態は深刻です。すぐに手を打たなければ貴方の御命が危ない」
仙人はすぐに麺を食べ終えた。壬もである。
「行きますか。その女の家はどちらですか」
「はい」
二人は席を立って店を後にした。そして壬に案内され女の家に向かった。
「こちらです」
その家は街の隅の方にあった。さして大きくはないがまとまったいい家であった。
「ここですか」
「はい」
仙人は家を見回した。
「ううむ」
その顔がさらに険しくなっていく。額からは脂汗まで流れていた。
「これはいかん」
「それ程強いのですか」
「はい、今までここまで強い妖気を感じたことはありませんでした」
仙人はまだ汗をたらしていた。
「これは厄介なことになりそうですな」
そして壬に顔を向けた。
「ある程度覚悟を決めた方がいいですぞ」
「はい」
壬も自分自身が危機にあることはわかっていた。だがそれはどうやら彼が思っていたよりも深刻なようだ。
「まずは敵を見ましょう」
二人は門に向かった。だが鍵がかかっていた。
「では」
回り込んで庭先に忍び込んだ。そして家の中を覗き込んだ。
「ここにいる筈です」
そして女の部屋を見た。だがそこに女はいなかった。
代わりに恐ろしい顔をした者がいた。人の姿をしてはいるが何かが違う。
「あれは」
「静かに」
仙人は壬を諭した。
「気付かれては終わりですぞ」
そして小声で囁いた。
「はい」
壬はそれに従うしかなかった。そしてその異形の者を覗いた。
見れば顔は確かに人だが何かが違っていた。肌は青白く蝋の様である。髪はザンバラで乱れ艶なぞ全くない。灰色になっていた。
そして目は赤かった。炎の様に赤い色をしていた。
「間違いありませんな。鬼です」
仙人はその姿を見て言った。
「それもかなり悪質なものです。あの目を御覧なさい」
そう言って壬に鬼の赤い目を指し示した。
「あの目は人食いの目です」
「人食いですか」
「はい」
中国では人食いの大罪を犯した者は目が赤くなると言われている。とするとあの鬼は人を食う鬼だ。
「どうやら私の予想は当たっ
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