夫を救った妻の話
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の為なら何でもしようと決意している妻の強い声であった。
「そのお気持ちです」
道士はそこで言った。
「その貴女のご主人を思う気持ちがご主人を救われたのです」
「この気持ちが」
「そうです、その想うお気持ちが必要だったのです。それがなければこの薬は何の役にも立ちませんから」
「そうなのですか」
「はい、この薬は想う気持ちを形にするものですから」
「それが魂になるのですね」
「そういうことです」
道士は言った。
「もうすぐその想うお気持ちが功を為しますよ」
見れば壬の顔が見る見るうちに赤らんでいく。そして傷口も塞がっていた。
「ほら」
そして彼は目を開けた。ゆっくりと棺から出て来た。
「私は助かったのか」
「はい」
陳は笑顔で答えた。
「鬼に肝を食われたというのに」
「奥方が救われたのです」
仙人が言った。
「御前が」
壬は妻に顔を向けた。
「御前が私を救ってくれたのか」
彼は棺から出た。そして陳のもとに歩み寄った。
「すまない、色々と苦労をかけた」
そう言って妻を抱き締めた。
「いえ」
だが彼女はそれに首を横に振った。
「私は貴方だけが全てですから。ですから」
「そうか」
それ以上言う必要はなかった。こうして彼等は再び抱き合うことができるようになった。
生き返った壬は以後も商売に励み財を為した。そして太原で知らぬ者はいない程の金持ちとなった。
その傍らにはいつも美しい妻である陳がいた。彼女はこれまで以上に夫を助け内助の功を発揮した。そして二人は子に恵まれ何時までも仲睦まじく幸福に暮らした。
この妻を太原の人々は褒め称えた。そしてその話は何時までも語り継がれていったのであった。
夫を救った妻の話 完
2004・10・19
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