夫を救った妻の話
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て。必ずや貴女のご主人を生き返らせてくれることでしょう」
「わかりました」
「ではそこへ行きましょう。勿論ご主人も一緒に」
「はい」
こうして二人は壬を入れた棺を車の上に置いて進みはじめた。そしてその道寺に着いた。
「ここです」
仙人はすぐにその門を開けた。すると中からその道士が姿を現わした。
「おお、お主か。久し振りじゃのう」
彼は仙人の姿を見ると顔を綻ばせた。
「来ておるなら来ればいいのに」
「来るつもりだったがの」
仙人も顔を綻ばせていた。
「実はその前に鬼が出てのう」
「鬼が」
道士はそれを聞いて綻んでいた顔を引き締めさせた。
「うむ。それでこちらの奥方のご主人の肝を食ってしまったのじゃ」
「こちらのか」
そこで彼は陳の顔を見た。
「何とも気の毒に」
彼は沈痛な顔で言った。
「で、鬼はどうした」
「わしが退治した。老婆に化けておったわ」
「そうか。それは何よりだ。ところでだ」
道士はここで目の光を強くさせた。
「そちらの棺に入っておるのはそちらの方のご主人であるな」
「いかにも」
仙人は答えた。
「ならばお主が何故ここに来たかわかったぞ。ご主人を生き返らせたいのじゃな」
「そうじゃ。できるか」
「少し死体を見せてくれ」
道士はそう言うと車の上に置かれている壬の死体を覗き込んだ。
「ううむ」
彼は暫くその死体を見ていた。そしてそれから言った。
「大丈夫じゃ。任せておけ」
「本当ですか!?」
それを聞いた陳の顔色が一変した。今まで沈みきっていたのが急に晴れやかなものになった。
「はい。ですが奥方には一つ苦労をしてもらわなければなりません」
道士は厳しい顔でそう言った。
「苦労とは」
「はい、実は」
彼はここで二人を寺の中に案内した。
やはり質素な寺であった。唐代からいるような道士のいる寺とは思えなかった。これといって華美なものはなく至ってどの街の片隅にもある有り触れた道寺であった。
その中央には神の像が置かれていた。神農のものであった。牛の頭に人の身体を持つ古代の帝王の一人である。人々に農業や医学を教えた神だという。
道士はその側に置かれている一つの丸薬を取り出してきた。
「これですが」
見ればそれは黄色く小さいものであった。見たところ飴玉の様である。
「はい」
道士は答えた。
「これをお飲み下さい」
「私がですね」
「そうです。そうすればご主人は助かります」
彼は言った。
「ただしかなりの、死ぬ様な苦痛が襲いますがよろしいですか。いや」
「いや!?」
「下手をすると貴女の御命も危ない。それでもよろしい
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