夫を救った妻の話
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した。そして鬼の頭を叩いた。
「グハッ!」
その歳からは想像もできぬ程の速さであった。まるで雷の様な速さで杖を振り下ろしたのであった。
一撃を受けた鬼の皮は溶け落ちた。そしてその中から鬼の真の姿が現われた。
「ヒ・・・・・・!」
その禍々しい姿を見た陳は思わず叫び声をあげた。だが仙人にはその声は耳に入らなかった。あくまで鬼と対峙していたからだ。
「ムン!」
仙人は隙を置かず再び杖を振り下ろした。鬼は今度はそれを腕で防ごうとする。
「そうそう好きにさせてたまるか!」
叫びながら動く。だが杖を防ぐことは出来なかった。
杖は今度は腕を溶かした。やはり仙人の力は鬼に対して圧倒的な強さを誇る。
そしてさらに打ちつける。それで鬼の頭を砕いた。
「凄い、あんな強い鬼をあっという間に」
「奥方、御安心召されるにはまだ早いですぞ」
彼はさらに攻撃を続けた。そして鬼の身体を完全に消し去った。
しかしまだ終わりではなかった。その溶けた身体は煙になり逃げ去ろうとしていた。
「逃がすか!」
彼は今度は懐から何かを取り出した。それは小さな壺であった。
「それ!」
その口の部分を鬼の煙に向ける。それでその煙を吸い込んでしまった。
その壺を杖で叩き割った。すぅると煙はその割れた壺ごと何処かへ消え去ってしまった。
「鬼はこれで退治致しましたぞ」
彼は肩で息をしながら言った。
「一瞬でケリを着けることが出来ましたが一歩間違えていたら。どうなるかわかりませんでしたな」
「そうなのですか」
「はい。この鬼は恐ろしい妖力を持っておりました。それを使わせていたら危ないところでした」
「すぐに攻撃に出たからよかったのですね」
「そういうことです。先んずれば人を征すといいますから」
彼はここで項羽の言葉を引用した。
「何はともあれこれで鬼は倒しました。後はご主人ですな」
「はい」
陳はその言葉に頷いた。
「夫はどうしたら生き返るでしょうか」
「それですが」
仙人はそれについて話しはじめた。
「実は私ではご主人を生き返らせることは出来ないのです」
「それでは一体」
「まあ話は最後まで聞いて下さい。いいですか」
「はい」
陳は落ち着きを取り戻して彼の話に耳を傾けた。
「街の外れに道士が一人おりますね」
「ええ」
あまり派手ではない一つの道寺にいる。身なりも質素な男でこれといって目立ったところはない。
「彼ならば生き返らせることが出来ます」
「本当ですか!?」
「本当です。実はあの男は唐代から生きておりまして私の古い知り合いなのです」
「そうだったのですか」
「彼はそうした術に長けておりまし
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