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夫を救った妻の話
夫を救った妻の話
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さい」
「貴方にですか」
「ええ。悪いようには致しません」
 丁度知り合いに医者がいた。彼ならば間違いはないだろうと思った。
 そして彼は女を医者に案内しようとした。だが女はここで妙なことを言った。
「お医者様はちょっと」
「駄目なのですか?」
 彼はそれを聞きまた妙なことだと思った。
「はい、それには及びませんので」
「左様ですか」
 えらく苦しそうだったのに不思議なことだ。だが彼はここは女の言葉に従うことにした。
「ではどうすれば宜しいですか」
「私の家に。そこに行けば薬がありますので」
「わかりました」
 そして逆に女の家に案内された。
 彼女に夫がいるのだろうか。ふとそう思ったがそれにしては妙だ。何故このような時間に一人で外にいるのだろうか。
 親がいるとも考えられない。同じ理由でだ。
 それにこれ程の美しさなら街の話題になっている筈だ。だが壬はこの女を見たのははじめてだ。
(最近越してきたのか)
 そう思ったがそんな話も聞いてはいない。彼にはわからないことだらけであった。
 そう考えているうちに女の家に着いた。見れば貧しい一軒家である。
「こんなところに」
 やはり知らない。商売柄街のあちこちを歩き回ることもあるがこんなところに家があるとははじめて見た。やはり不思議であった。
「どうぞ」
 だが女はそんな彼の考えを知らないのかまだ苦しそうな顔で彼を家に招き入れた。
 中もやはり外と同じく貧しい造りである。寝台と机、台所がある他はこれといって何もない。
「寝台へ」
 そして自らを寝台へ運ばせる。そして彼女はそこに横になった。
「薬は何処ですかな」
 壬は寝台に横になり安堵の息を立てた彼女に問うた。
「それは」
 彼女は机の上を指差した。見ればそこに一つの壺があった。
「その中にあります」
 中を覗いてみると黒くて丸いものが沢山入っていた。どうやら丸薬らしい。
「それを下さい」
「わかりました」
 壬は言われるままそれを取り出した。そしてそれを女に手渡した。
「どうぞ」
「有り難うございます」
 彼女はそれを手にすると水も使わずに飲み込んだ。そして安心しきった顔で言った。
「これでもう大丈夫です」
「それは一体何の薬ですか」
 壬は気になったので問うた。
「精のつく薬です。私は身体が弱くて。お医者様から頂いたものです」
「そうですか」
 そう言われると納得がいく。どうも彼女は身体が強くはないようだ。
「ご家族はおられないのですか」
 壬は今まで気になっていたことを問うた。家の中を見る限り彼女だけのようだが。
「はい」 
 彼女は答えた。
「ついこの前この街
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