第二百二十五話 馬揃えその四
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「そして何といってもな」
「織田家じゃな」
「青が海みたいじゃ」
「海みたいに奇麗じゃ」
「どの方も着飾っておられて」
「前田慶次様を見よ」
天下一の傾奇者である彼をというのだ。
「朱槍に青く染めた毛皮」
「しかも袴は青ではなく赤や黄色に染めてな」
「髪はあえて白髪にされ」
「鞍は真っ赤じゃ」
「上着も赤や黄色とな」
「実に派手じゃ」
「いやはや、傾奇者であっても」
それでもというのだ。
「今日はまた別格じゃ」
「まさに天下随一の傾き」
「見事なことじゃ」
「他の方もな」
「それぞれ見事じゃ」
「柴田様を見よ」
彼はというと。
「源平の頃の大鎧じゃ」
「柴田様らしい格好じゃな」
「古風でしかも武骨」
「猿面冠者の羽柴様も面白いが」
「あの方もな」
「実に似合っておられる」
柴田も注目されていた、確かに大鎧の格好が実によく似合っている。それで狂言の冠者の様な出で立ちになっている羽柴も彼に言うのだった。
「いや、実に」
「似合っておるか」
「権六殿らしい」
「まあのう、わしはな」
ここで柴田がその羽柴に言うことはというと。
「新しいことは出来ぬ」
「だからですか」
「こうした古い格好になったのじゃ」
「上様の様にですな」
「どうもわしは古い人間じゃ」
自分でだ、少し苦笑いを浮かべて言うのだった。
「しかも器用でもない、それでもな」
「こうした時はですか」
「何時でもじゃ、わしはわしなりにな」
柴田勝家としてというのだ。
「上様のお役二立てればと思っておる、それでじゃ」
「権六殿のやり方で」
「上様をお助けしておるつもりじゃ」
「左様ですか、ではそれがしも」
羽柴もというのだった。
「それがしらしくですな」
「上様をお助けするのじゃな」
「そう考えています」
「左様か」
「はい、それがしはどうもきりっと格好よくはありませぬ」
今もだ、羽柴は剽軽な表情で言う。
「ですからそれがしのやり方で」
「上様にお仕えしてじゃな」
「天下の為に励みます」
「そうするのじゃな、御主も」
「そのつもりです」
「そうじゃな。しかし」
柴田はここでだ、朝廷の方を見た。そこに帝と馬揃えに加わらなかった公家達がいる。柴田はそちらを見てだった。
その中の一人をだ、見ていぶかしんで言った。
「あの暗い顔の御仁は一体」
「ああ、あのやけに黒い服を着られた」
「あの方は誰じゃ」
「さて、それがしも」
そう言われるとだ、羽柴も首を傾げさせた。
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