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古城
6部分:第六章
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拝に狂って」
「生贄を捧げていたのだな」
「若い娘を何人も攫って」
 実際に欧州にはそんな話が幾つもあるから恐ろしい。
「そのうえ赤子を引き裂いたり墓を暴いたり」
「牧師とは思えないな」
「その果てに怪死したそうです。悪魔に殺されたのだとか」
「奇怪な話だ」
「中に入ることはできません」
 メルヴィルは生憎といった感じでこう述べた。
「あくまで前から観光で見るだけですが」
「それだけか」
「はい、それだけです」
 また主に対して答えるがその言葉は実に素っ気無いものであった。
「それでも宜しいですか?」
「構わん」
 卿もまた一言で答えた。
「次は軽いデザートといったところだがな」
「デザートですか」
「昨夜がメインディッシュだった」
 昨夜のことを彼の中だけで思い出して述べるのだった。
「それで今日はデザートだ」
「デザートですか」
「やはり旅はいい」
 ここでふとした感じで述べる。
「何かと色々とわかる」
「それは確かに」
 メルヴィルにも頷くことのできる話だった。
「その通りです」
「いいことも悪いことも含めてな。ではそれをわかる為に」
 言うのだった。ここで。
「旅を続けるぞ」
「わかりました」
 オズワルド卿は最後に後ろを振り向いた。もうあの少年がいた城は森の中に隠れ見えなくなっていた。しかし彼はまだ見ていた。昨夜その城で見せられたものを。今でも憶えているのだった。彼の中だけで。恐怖も含めて。


古城   完


                 2008・4・13

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