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古城
3部分:第三章
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卿はさらに言う。
「その縁で匿ったのです」
「美談ですな」
 オズワルド卿はそれを聞いてまず述べた。今二人はそれぞれの従者達を後ろに立たせてソファーニ座って話をしている。ソファーの間のテーブルの上にあるのはミルクティーとスコーンである。それ等を楽しみながら話をしているのだった。
「それが美談でしたらこうした話にはなりません」
「といいますと」
「事情が変わりまして」
 スタンフィールド卿は言う。
「先祖は敵に脅され。止むを得なくその家を見捨てることにしたのです」
「見捨てる」
「より正確に言えば殺すしかなくなった」
 言葉を言い換えてきた。
「その結果として先祖が選んだ選択は」
「暗殺ですか」
「はい。まずは一家を騙して睡眠薬を入れた食べ物を飲ませ」
 まずはそれであった。
「そうしてそれから一室に閉じ込めたのです」
「餓死させたのですね」
「そうです」
 そういうことなのだった。それで殺すつもりだったのだ。
「先祖の恥の話ですが」
 ここで少し自嘲気味になるスタンフィールド卿であった。
「そういうことになったのです」
「そうですか。それでは」
 オズワルド卿はここまで話を聞いてこの城に出るのは何かをおおよそ察した。
「ではその一家の亡霊が」
「いえ、それが違うのです」
「違うのですか」
「そうです。一家は確かに餓死しました」
 これは言うのだった。
「ですが」
「ですが。何かあるのですか」
「それがあるのです。一家の中で一人だけ生き残っていたのです」
「一人だけ。それは一体」
「閉じ込めてから二週間後」
 人が餓死するには充分過ぎる時間である。
「先祖が部屋を開けて死んだかどうか確認するとまずそこには痩せ衰え骨と皮ばかりになった一家の亡骸が累々と横たわっていたそうです」
「その中で一人だけですか」
「生きていたのはその嫡子」
 つまりは男の子というわけだ。
「まだ少年だった彼だけが生き残っていたのです。ところが」
「ところが」
「彼は。人ではなくなっていたそうです」
 強張った顔でオズワルド卿に述べるのだった。
「二週間の餓えと絶望の中で。彼がなっていたのは」
「何だったのですか」
「怪物です」
 一言であった。
「怪物といいますと」
「二週間です」
 今度は時間が語られた。この場合は重要な意味を持っているものだった。
「その間生きていたのです。どうして生きていたと思われますか」
「それは」
 それについて問われたオズワルド卿の顔が強張る。どうしてなのかは彼も薄々わかったのだ。だがわかってはいてもそれを言葉として出すのははばかれたのだ。
「食べていたのです」
「ですか」
「はい」
 その彼にかわってスタンフィールド卿が言うのであった。

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