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歌集「春雪花」
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 薄衣

  纏いて出でし

   十六夜の

 そぼ降る光

    幽かなりけり



 まるで薄い衣を纏ったかの様に、雲に覆われた十六夜は…その光さえ淡く、幽かに大地を照すだけで…。

 それははっきりとはしない宵闇…。先が見えるようで見えず、まるで私の未来を暗示しているかのような…。

 彼に…月を見る風流さなど期待できないが、もし見ているのなら…どんな風に見えているのだろうか…?

 とても…知りたい…。



 遅れ出づ

  十六夜淡き

    山並みも

 紅く見えにし

     君を想えば


 やや遅く昇る十六夜は、想い人を待たせたかのように薄雲に隠れていた…。

 その光は幽かで、山並みを映し出す程ではないが…遠い彼のことを想いながら見れば、恰かも紅葉で美しく染まったように見える…。

 彼と二人、そんな景色を見られたら幸せだろうな…そんな有り得ないことを想像し、また一人…淡い十六夜を眺めた…。




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