短編集
少年少女の出会いの話
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「で、聞きたい事って何かしら。ジュビアのスリーサイズなら知らないわよ」
知ってたとして教える訳ないけど、と続けて、細いスプーンを口に運ぶ。ふわふわとしたホイップクリームに艶やかな赤いベリーソースがよく映えるそれに珍しく口元を緩めるティアの一言にずっこけそうになりながら、グレイもコーヒーを啜った。
「…お前さあ」
「何よ」
溜息をどうにか堪えつつ、向かい側でパフェを食べ進めるティアに目を向ける。といっても大きなパフェグラスのせいで顔の半分ほどが隠れてしまっているのだが。
聞きたい事がある、と声をかけたのはグレイだったし、それに対して「場所を変えたいんだけど」と言われた時も特に気にはしなかった。場所がマグノリアでそこそこ有名なカフェであっても特に思う事はなかったし、そこで迷わずメニューを手に取った彼女を見ても「まあ場所が場所だし」くらいにしか考えが至らなかった訳で。
だが、この様子を見ていると何だか……。
「食いたかっただけだろ、それ」
「そうだけど」
やはりそうだったか。
話を聞く云々の前に、ティアはただこの店のパフェが食べたかっただけなのだ。彼女が甘いものをよく食べるのは見慣れた光景だし、よく好むのも知っている。ついでに言えば、場所を指定したのは彼女だが、今彼女は財布を含め荷物の1つすら持っていない。
つまり最初からグレイに奢ってもらう気満々な訳で、ティアの顔の半分ほどを隠すほどのサイズのパフェはそれなりの値段がする。
別に奢る奢らないでカリカリするほど器が小さい覚えはないし、これからティアの機嫌を損ねるであろう事を聞くのだから、パフェ1つでそれを抑えられるかもしれないなら安いものだとも考えられなくはない。彼女の機嫌を損ねようものなら確実にあのシスコンが飛んでくる。それだけは厄介だった。
「それで、アンタは私に何を聞きたい訳?答えられる事なら答えてやるわ」
「…何か丸くなったな」
「太ったって言いたいの?お生憎様、体重も体型も変わってないから」
「そっちじゃなくて、性格の方だよ。昔だったら“他を当たれば”とか言ってただろ?」
そう言えばティアは少し目を見張り、照れ隠しのように視線を逸らす。
あのカトレーンでの一件があってからティアが変わったと思うのはグレイだけじゃない。ギルドメンバー全員が感じている事だった。
対応が柔らかくなったり、どことなく関わりやすくなったりと角が削れてきた気がする。勿論、短気で人をすぐ睨む上に言葉と蹴りが同時に飛ぶ辺りは何も変わっていない。
「……別に、アンタとは古い付き合いだし。ただの気まぐれよ」
ふん、と小さく鼻を鳴らす。小馬鹿にしたようなそれも、ただの照れ隠しだと思えば苛立つ事はない。
確かに、2人は10年程前からの知り合いではある。グレイが|妖
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