暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
短編集
少年少女の出会いの話
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んなさい。そろそろ発車時刻ですよね。引き止めちゃってすいません」
「え?…あ、ホントだ。急ごうウル!」

言われて気が付いたリオンが荷物を抱える。そのまま列車に入っていこうと背を向けて、何かを思い出したのかくるりと振り返った。
その顔には笑みが浮かんでいて、真っ直ぐにティアを見ている。

「ありがとう、ティア。本当に楽しかった。また会おうな!」
「……ま、気が向いたらね。おそらく10年くらい後の話だろうけど」
「えー!?今度はこっちに遊びに来てよ!待ってるからさ!」
「許可が出たらね。……多分却下されるけど」
「え?何か言った?」
「別に何も。ほら、早く乗っちゃいなさいな」

ぼそっとした呟きに首を傾げたリオンの背中を押すようにして、半ば無理矢理列車に乗せる。バランスを崩し転びかけたところを支えつつ、後から乗り込んだウルが顔を上げた。

「それじゃあ、またいつか。会える事を願ってるよ」
「来るならいつでも来なさい。案内くらいはしてあげるわ」





その“いつか”が来ないまま、ウルとは2度と会う事がなく。
明るかった彼は暗さを覚え、暗かった彼女は幾分かの明るさを持って再会した。








「……という訳で、めでたしめでたし」

そう締めくくって最後の一口を口に運ぶ。気づけばパフェグラスの中は空っぽで、コーヒーは半分未満を残して冷め切っていた。
冷めたコーヒーを一気に飲み干してから、グレイは眉を顰める。

「…って、結局何でお前はウルの……」
「もらった、っていうのが正しいのかしらね」

その問いを予想していたように、即座に答えが返ってきた。スプーンをパフェグラスの中に音を立てて入れて、その手はその流れで立てた腕の手の甲に顎を乗せる。
思い出すように目を伏せて、すっかり氷の溶けた水の入ったグラスをくるりと回した。その中に人差し指を入れてかき回すと、小さな魔法陣の上に薔薇と茨で構成する冠が現れる。グラスの中で窮屈そうに咲くそれは、ティアが指を抜くと同時に消え去った。

「本当は娘に教えたかったって言ってた。けどそれはもう出来ないから、名前のよく似たあなたにもらってほしいって。それで受け取って、自己流を加えたのが私の魔法」

水で濡れたはずの指は、何事もなかったかのように水滴がない。少し疑問に思ってから、水の魔導士なのだから当然といえば当然かと思い直してレシートを掴む。
と、空っぽのパフェグラスを見つめていたティアがぽつりと呟いた。

「そういえば、なんだけど」
「ん?」
「話に出て来た女の子、あの後また会ったのよ。しかもついこの間」

そう言う口角が楽しそうに吊り上がっているのを見て、僅かに―――いや、かなり嫌な予感がする。何だかとんでもない爆弾が落と
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