短編集
少年少女の出会いの話
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場所じゃないのにね、と続けて、目を伏せる。目の青さが深くなる僅か数秒に密やかな郷愁めいた何かを見た気がして、言葉に詰まった。
けれど、その薄い感情もすぐに消え去る。最初からそんな感情なんてなかったかのような瞳が、揶揄うようにこちらを見ていた。
なんとなく、特に何を思った訳でもないが目を逸らす。テーブルの上のコーヒーの中で、自分の顔と目が合った。
「ああ…そういえば、話してなかったわね。私とアイツがどう知り合ったのかも、アンタが聞きたい事も。いい機会だし、話してあげる」
そう言って、ティアはパフェに目を落とす。その脳裏で浮かぶのは、あの日の記憶。
―――――“魔法都市”にいた頃唯一の、悪くない思い出だった。
今から13年前、ティアが妖精の尻尾に加入する数か月前の話。
ひらひらと雪が降るその日、彼と彼女は出会った。
「毎度ありー!気を付けて帰れよ嬢ちゃん!」
商売人らしい笑顔で手を振る男を当然のように無視する。気を付けて帰れとは言うが本心ではない事は解っているし、にこにこ笑っていなければ仕事にならないような職業の人相手に愛想笑いを返してやる気になんてなれなかった。相手は笑うのが仕事のようなもので、それでも結局は他人でしかない。身内にさえ無表情を崩さないティアが、他人に愛想よく振る舞うなんてする訳もなかった。
(……どうでもいいけど)
短く息を吐いて目を伏せる。
誰が何をしようがどうでもいいし、興味すら持てない。というか、そんな事より寒い。両腕で抱えるように持つ荷物のせいで息を吹きかける事も出来ない指先が凍りそうだ。
「わっ…キミ、大丈夫かい?そんなに重たそうなものを1人で持って……」
「邪魔」
荷物のせいでマトモに前が見えない。ぶつかりかけた白いマフラーの青年の横を、ほぼ無視に近い形で通り過ぎる。何かを言いたげに澄んだ水色の目がこちらを見ているような気がしたが、きっと気のせいだろう。一瞬知り合いかとも考えたが、白髪で、それでいて青年である知り合いはいない。それに、知り合いだったとしても、彼女をティアだとは認識出来ないはずだ。
「はあ…」
溜め息を1つ。ちらりと店の窓に目を向ければ、どことなく不機嫌そうな無表情と目が合った。
フードの下から覗く胸元ほどまでの髪の色はくすんだ赤。4歳の少女が浮かべるには疑心と警戒が強すぎる目は明るいオレンジ色でティアを見つめている。
勿論、この色は地ではない。髪色と目でカトレーンであると悟られない為の変装だ。
(お祖母様も馬鹿よね……)
変装は完璧だ。ウィッグを被り、一定時間目の色
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