短編集
少年少女の出会いの話
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精の尻尾《フェアリーテイル》に加入した頃には既にティアはいて、やはりその時から人が近づいてくるのを徹底的に拒む少女だった。
故に古い仲ではあるものの、だからといって仲がいいとか気を許せる間柄だとか、そういった事はない。どちらかといえばチーム内でも関わりは薄いし、強いて言うなら魔法の相性がいいから時々組むかなあ、程度である。まあそれも、ティアは無鉄砲なところのあるナツのカバーに回る事が多い為に本当に“時々”なのだが。
「気まぐれ、ねえ……」
慣れてしまえば解りやすい照れ隠しにニヤリと笑みを浮かべると、即座に群青色の瞳がこちらを鋭く睨んでくる。
「どうだっていいでしょ、そんな事。聞きたい事があるなら早くして。私だって暇じゃないんだから」
苛立たしげに左人差し指でテーブルをコツコツ叩く。勿論右手はパフェグラスの中身を掬っては食べ掬っては食べを繰り返した状態で、だ。
急かされて、グレイの中でどうにか覚悟が固まる。聞きたい事があると声をかけた時からある程度の覚悟はしていたが、それでもティアに彼の―――グレイの兄弟子であるあの青年の事を聞くのは、適当に拾ってきたような覚悟やら勇気やらでは何の役にも立ちやしない。
「……お前の使う魔法で、薔薇冠ってのがあるだろ」
「ええ、確かにあるけど。それが何なの?」
ティアの疑問は尤もで、別に彼女の魔法について聞く事なんてない。
ただしそれは、その魔法がグレイにとって本当に無関係である場合の話であり。
「…オレの師匠が、昔同じ魔法を使ってた」
スプーンが止まる。
「勿論氷の造形魔法で、完全に同じって訳じゃねえ。けど…似てるにしては似すぎてるんだ」
初めて見た、あの時。
楽園の塔で彼女が使用した魔法を見たその瞬間、グレイの脳裏を過ったのは、彼の師匠たるウルの姿だった。咲き誇る薔薇も、王冠を構成するような茨も、記憶の中の姿そのままで。
似ているという言葉1つで片づけられるレベルではなかった。細部は異なっていたものの、あの魔法の中心は、元となったであろう魔法は―――――。
「もしかして、あれは……」
「アンタの思ってる通りよ、あれはアンタの師匠の魔法だった」
彼の言葉を遮って呟く。見開かれたグレイの目を、深い青の目が見つめている。小さな唇から緩やかに吐息が零れ、ゆっくりとした瞬きが1つ。
「どこで知ったのか、って顔ね」
静かに口角を吊り上げる。どこか挑発的なそれは、彼女なりの笑み。見慣れていない人が見ると馬鹿にされているとも感じてしまうであろう、そんな顔。
「私はアイツの…まあ幼馴染よ?アイツがフルールに来た時、勿論ウルも一緒だったわ。“魔法都市”に興味があったから、2人で旅行に来たんですって」
望んで来るほどの
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