第四話「飛鳥の決意」
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、俺は一言でしか物事を返さない。
「……九条さん、少し目を見せて?」
何か気になったのか、彼女は両手を俺の頬に添えてこちらへ向かせると、ぼんやりとした俺の目を見つめた。
――瞳孔の色が違う。何か、おかしい……
「……」
弥生は、こんな俺の背に一枚の札を張った。薄々気付いてはいたが、どうでもいいことと捉えて、俺はそのままソファーに座りながら夜を待つと、そのまま寝床へ向かった。
「……」
布団へ横たわり、天井を見つめていた。すると、再び舞香の声が俺の頭の中へ響き始める。
『お兄ちゃん……お兄ちゃん……』
「舞……香……」
そのとき、俺は起きているのか、寝ているのかさ感覚がつかめず、その体はゆっくりと起き上がり、布団から離れ、部屋から離れ、ついには蒼真の自宅から出て行ってしまった。
「舞香……舞香……」
ただ、妹の名を唱え続けながら、俺は一人で基地の内部にあるテレポートルームへと向かった。
「くぅ! 俺としたことが……」
早朝、蒼真は歯を噛みしめて、自分の招いた油断が原因になったと悔やんでいた。
「すまない、俺が勝手な思い込みをしたばかりに……」
あの手の青年は、予想以上の衝撃を受ければ、大抵は数日間は口を利かずに放心状態になるのが多い、しかし今回は違っていた。
「いち早く気づかなかった私にも責任はあります。念のため、九条さんに発信機の御札を付けておきました。細かいほど正確ではありませんが、位置はわかります」
「わかった。すぐに出かけよう?」
昨夜、何者かがテレポートルームを使用した痕跡があったため、おそらく飛鳥ではないかと思われる。だが、彼にはテレポートルームの説明はしていない。
「九条さんの目は普通ではありません。やはり催眠にかけられていました……」
「何者かが飛鳥のやつを操っていると?」
「可能性は高いです」
「こうしてはいられないな……弥生、一緒に地上へ来てくれ、飛鳥を探すぞ?」
「はい!」
二人はすぐさま飛鳥の後を追うかのようにテレポートルームへ向かった。
*
メガロポリス・エリア3
「……ん、ここは?」
目を覚ますと、そこは蒼真の自宅ではない。見知らぬ町の裏路地であった。寝ている間に寝ぼけて外へ出てしまったのか、そう思って裏路地から出てみるが、そこは要塞の最上部の居住エリアではなかった。
「ど、どこだ!?」
ふと看板を見ると、ここはメガロポリスのエリア3であった。
「メガロポリスのエリア3!?」
心当たりが全くない。何故、寝ている間に地上のメガロポリスまで来てしまったのか……
とりあえず、何とかしなくては……今の俺は「指名手配犯」なのだ。
できるだけ、顔を見られないよう人通りの少ない、裏路地を歩き続けた。
「……」
慎重に、できるだけ人に見られないように、怪しまれない
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