8話 太陽side
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「おい、いいか太陽。せーので出るぞ」
「え、でも、外からは鍵がかけられてて…」
「はぁ?んなもん俺がとっくに開けてるっつーの」
「え!?」
「でなきゃ俺がお前の病室に入れるわけないだろ」
「え、だって、ドアが開いた音なんて聞こえてないよ」
「いやお前泣いてたし、気づかなかったんじゃねぇの?」
祐ちゃんは言いながらドアに耳を当てて外の気配を探っている。
僕はどうしていいかわからないので、ちょっと待機。
まさか、一緒に脱走の計画をねるとは思わなかった。
でも、祐ちゃんの作戦は現実味を帯びていて、ますます1個上には見えなくなった。
「作戦の確認をするぞ。まず、このドアはスライド式じゃねぇから、必ず死角が出来る。しかもこっちから外に押すタイプときた。当然、ドアの影になっているところは見えない。…ここまではわかるな?」
僕は黙って頷く。
「開けたドアの向こう側を見るためには体をそちらに向ける…つまりは視線を向けなければならない。しかしそこで一つ問題が起きる。この病室は曲がり角のすぐ近く。ドアを開けてすぐ見えるとこも、開けた時に死角になるところを見ている間に誰かが曲がってくるかもしれない」
「う、うん」
祐ちゃんは再びポケットを探ると、今度はペンとこの病院の見取り図のようなものを取り出した。
「ドアを開けたら、お前が死角側、俺が曲がり角をのぞく。両方誰もいなかったら、死角側に走る。片方に誰かがいたらそいつの逆方向に走る。ルートは俺が後から指示してやる。…把握はできたか?」
「うん。僕が死角側を確認すればいいんだよね」
「そうだ」
…。
なんだか緊張してきた。普段抜け出すより、複雑な作戦だからかな?
でも、楽しい。
「ねぇ、祐ちゃん、この作戦うまくいくかな?」
「バーカ。いくかじゃねぇ、いかせるんだよ」
「………」
カッコイイ…!!
たった1個、されど1個、こんなにもこの人は…。
でも、こんな作戦を考えつくなんて、よっぽど外に出たいんだろうな。
…何のために脱走するんだろう。
僕は、サッカーをするため。
じゃあ、祐ちゃんは?
「ゆ、祐ちゃ」
「行くぞ太陽。作戦通りに動けよ」
「え、あ、うん!!」
僕達は行動を開始した…わけだが開始数秒でそれは失敗に終わった。
ドアを開けた瞬間、見慣れない看護師さんがいた。
「…何をしているのかな?」
僕と祐ちゃんはその後さんざん怒られた。
それを素直に聞くはずもない、祐ちゃん。
「君たちが脱走を考えたりするから、ほかの患者さんの診察ができなくなるんだよ!?」
「なら俺らのことはほっときゃいいじゃないですか」
「い、いいかい!?君たちは大きな病気を患っている!!発作が起きたら、命に関わることも…」
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