第十話:彼女等の正体
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心なしか恨めしげな目線を向けて来るマリスだが、そんな事俺に言われても分かる訳が無い。
だいたい《婚約》とは何なのか、する必要があるのは何故か、《婚約者》とはどういう存在かなど、俺は知らないのだ。
しかもその部分だけ丸々焦げていると来た。
……最悪にも程があるだろ。
「おっかしいなぁ……兄ちゃんだったら、仮《婚約》の条件は普通に満たしてる筈なんだけど……?」
「仮? 条件? それは何なんだ」
「……説明したら、《婚約》してくれる?」
「いや、するも何も出来ないんだろ?」
「……そうだった」
こんな時にドジっ子もかくやのオトボケをやらなくても良いだろうが。単に時間が無駄になるだけだってのに。
「……仮《婚約》は相手の望む、望まぬにかかわらず……契約させる側が心から決めれば、仮《婚約》は成立する」
「他にも、『《婚約者》は十代男子に限る』って書いてあるし、本《婚約》なら兎も角、仮の時点で兄ちゃんが《婚約》出来ない筈は無いんだけど……」
そこで俺だけが気がつく……《婚約》とやらが出来ない理由に。
恐らくその “十代に限る” と言う年齢制限は、『魂』の年齢の事に違いない。
普通に生まれて普通に生きてきたのならば俺は当てはまっていただろうが、残念ながら俺は普通に無まれてきたのではなく、意識をそのままに体を赤子まで戻されたような状態で生まれたのだ。
なら魂の年齢は前の二十二歳と、今の十五歳を合わせて三十七歳相当。とっくの昔に十代を通り越している計算になる。
詰まるところ、幾ら盲点を突こうが思考錯誤しようが、《婚約》は永劫出来ないと言う訳だ。
自分一人納得し、次の言葉を紡ぐべく俺は口を開こうとする。
しかし―――――
「……恐らく、もう一つの概念が邪魔をしている為だと、そう推測される」
「へっ?」
「何だと?」
俺のその憶測を、マリスのその言葉が外して来た。
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