第十話:彼女等の正体
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ましぇん!」
世迷い事をほざく楓子を、ひと睨みで黙らせる。
もし唯嫌々受け流すだけの人物がいたのなら、黙ってこいつの『求愛』とやらを受け入れた結果、どんなおぞましい事態になるか想像できない人物だと俺は思う。
暴力は暴力、確かに正当性が確実にあるとは言えないが、単純な気持ち悪さや理不尽を受け入れぬ為にやっている。
そもそもうちのバカが、こうやって睨みを利かせたぐらいで改心出来る存在なら、脚や拳など飛んでいない。
妹である楓子の悪びれなさ、反省の度合いのいい加減さには、ほとほと呆れさせられる。
「お前……バレンタインチョコに、自分の髪の毛入れる質か」
「ギックゥ!? 何でわかったの……?」
先のお茶関連の台詞といい、今までの奇行といい、此処までヒント出されてわからいでか……。
「やっぱり食べなくて正解だった」
「え!? 食べてないの!? な、ならそのチョコレートどうしたの?」
「クラスの物欲しそうにしていた……湯川の奴にあげた」
「捨てられた方がマシだったぁあっ!!」
頭を抱えてヘッドバンギングを開始した楓子を無視し、俺は雑巾を取って来て床を拭く。こうなった原因は楓子でも、汚した犯人自体は俺であろうからだ。
……雑巾に髪の毛が一本付いていたのは、床に落ちた者が吹きとられたのだと、そう思いたい。
そして雑巾を置いた後、漸く痛みから解放された楓子を伴い居間に入ると、正座して待っている『来客』へと目を向けた。
そこに居るのだ。
数十分前に勘違いから軽いイザコザを起こした……殺戮の天使、マリシエルが。
俺達を襲わないと言質は取ったものの、それは同時に状況的に唯の口約束と言う事でもあり、余り過剰に警戒しても仕方ないが、一応心構えだけはしておいた方が良いだろう。
持って来た三本の内、まだそこまで冷えていない自作の無糖コーヒー牛乳をマリシエルの前に置き、彼女の隣に座ろうとする楓子の髪を引っ張って床に叩きつけ、引き摺って横に座らせた。
楓子がどちらに座ろうとも話を邪魔される可能性は大いにあるが、まだ自分の傍に座らせた方が止めやすい。
しかしその分、変質者を隣に置かねばならない……俺には苦難しか待っていないとは、一体どんな理不尽なのか。拷問だ新手の詐欺だと訴えたい気分になる。
「……有りがたくいただく」
言うが早いかビンの蓋を開け、マリシエルは一口飲む。と、僅かに眼が見開かれ、凄い勢いであっという間に飲み干してしまった。
そして、此方をジッと見つめて来る。その視線は、俺の側にある二つの便に注がれていると見て、間違いなさそうだ。
「お代わり、いるのか?」
「……いる」
「ほ
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