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少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第九話:殺戮の天使
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迷いを消し、突撃する。

 うちの家族はムカつく奴らだ。だが死んでいい人間でもなければ、見捨てられる人間でも無い。おれも、冷たいながらも一人の “人間” でしか無いのだから。


「らあぁ!!」
「……」


 回し蹴りをロー、ミドル、ハイと三段繰り出し、次いで背面タックル。それは後方へ飛び退る事で合わされ、殺戮の天使は左右へジグザグの軌道を描き突進してくる。

 俺は態と(・・)右へ跳んだ瞬間に大きく右へ傾き、少女の左からの突進を誘った。


(来い……!)


 果たして……見事罠にかかり、両手で相手を留めて足払い。そのまま地面に押し倒す。


「よしっ……!」
「あっ……」


 そして俺は気がついた。


 ガッチリと抑え込み、間近で見たからこそ良く分かる……彼女の美貌。透明な瞳は無垢さを感じさせる、普通に育った人間ではまずあり得ない輝きを持っている。

 無表情の所為で人形のように見え、そうでいてやはり血の通った存在である事を分からせる、体温やや吐き出される吐息。


 こんな状況で無ければ、恋の一つもしたかもしれないが……俺は次の行動を組みたてながら、真正面から睨み据えた。


「……」
「……」


 お互い無言のにらみ合いが続く中、俺の脳裏にふと一つの疑問がよぎった。


 そういえばコイツ、押しのける力が弱いわ、攻撃も単調だったわ、動けないものを攻撃しないわ……と言うか最初に近寄ってきた時も、ただじーっと見ていただけじゃあなかったか?

 もしかすると、俺の感違いによる独り相撲かもしれない。


「敵意は無いのか?」


 だから聞く事にした。

 こんな状況を招いておいて、敵意もクソも無かろうが……。


「……ない。だから、手を放して欲しい」
「殺さないか?」
「……不合理な理由で、殺しはしない」
「……」


 一先ず膠着状態なままではらちが明かないので、俺は警戒しつつ手を放して徐々に下がる。殺戮の天使も立ち上がり、此方へ二歩だけ近寄ると、口を開いて小声で話し始めた。


「……大胆な人……そして、勇気のある人……でも、何処か心が、悲しい人……」
「悲しい?」
「……決めた。あなたと、《婚約(エンゲージ)》する」
「……は?」


 本当に襲われない事は分かったが、しかしこいつは一体何を言っているのか。

 唯でさえ超常的な事が一辺に起きて頭が混乱しているのだ。これ以上の厄介事は招かないで欲しいものだ。


 彼女の発言を聞くに、それは叶いそうもないが……。


 しかし数秒経とうとも、何も起こらないし、彼女から近寄ろうともしない。“エンゲージ” すると言っていたが、なら何をす
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