5部分:第五章
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第五章
「俺には何も」
「私にもだ」
間は周りを見回しはしないがそれでも目で気配を探っているのだった。目を僅かばかり左右に動かしつつ気配を探っているのだった。
「何も感じはしないな」
「そうですよね。やっぱり」
「しかしだ」
だがここで彼はまた言うのだった。
「何かあるのは間違いない」
「そうですか」
「見るのだ」
ここで東の道を指差すのだった。
「あの方角は丑寅だ」
「ええ」
今の言葉で言えば東北の方角だ。かつては十二支により方角を言い表わしていたので東北といえば自然に丑寅と呼ばれたのである。
「魔物が出入りする場所だが」
「そこに画伯の家があるのですね」
「それだけではない」
間はさらに言葉を続けてきた。
「そこから。見よ」
「むっ!?」
相模もまた間の今の言葉にその丑寅の画伯の家がある場所を見た。見れば二人の目には小さな、だが邪な顔をした者達がそこから次から次にと出て来ているのだった。
「あれは。間違いないですね」
「そうだな。鬼だ」
「というとつまり」
「そうだ。間違いない」
間は強い言葉で相模に対して述べた。
「間違いなく画伯の屋敷には何かがある」
「はい」
「そして画伯自身にも」
その小さいが邪な鬼達を見て確信したのであった。
「あるぞ。だからだ」
「はい。行きますか」
こうして二人は画伯の屋敷の前まで来た。白い石垣の如き塀の向こうにかなり巨大な黒瓦の屋敷が見える。そしてその門は重厚でまるで城門の如きであった。
「相模君、感じるな」
「ええ」
二人はさらに険しくなった顔でその門の前で言い合った。
「この気配はまさに」
「そうだ。ここまで禍々しい気配は滅多にはない」
「黒ってわけですか」
「そうだ」
二人にとってはそれで充分だった。それでわかることだった。
「間違いない。ここに全ての謎がある」
「そうですね。けれど」
しかしであった。相模はその険しい顔でまた間に述べるのだった。
「どうやって中に入ります?」
彼が言うのはこのことだった。
「どうして。中に」
「若しくは画伯をどうするかだが」
「画伯は絶対にこの中にいますよ」
「そうだな」
間もまた顔を険しくさせていた。やはりこれまでになく。
「今もな」
「俺達には気付いてますからね」
「それはわからないが」
「けれど。こりゃおいそれとは中には入られませんね」
「うむ。今は退こう」
間はこう言って踵を返したのだった。
「今はな」
「あれっ、殴りこまないんですか」
「すぐに動いても必ずしもいい結果につながるとは言えない」
門に背を向けた状態で言うのだった。
「それよりも焦っていては成功するものも成功しない」
「必ず解決できる事件も解決できない
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