本編
第五話
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くるりと巻いている。そして鍔の中心部分には先程までのクリスタルが煌めいていた。そこから先は真っ直ぐに先端まで、シンプルな銀色で覆われた剣でいうところの刀身が伸びていた。
まさか形が変わるとは思っても見なかったヴァリエール夫妻もこれには驚いた。それと同時にある疑問が浮かんだ。
「なる程、シンプルではありますが美しい杖です。しかし見たところ魔法を用いた道具のようですが、地球には魔法は無かったのでは?」
その言葉を聞いて、ルイズは地球ともハルケギニアとも違うさらに別の世界の事を語り始めた。地球よりも遥かに発達した魔法文明を持つ世界のこと。地球にもたらされた、願いを叶える石を巡る争いがあったこと、最高の結末には後一歩足りなかったこと。長い月日の中で闇に浸食された魔導書のこと、闇を振り払う為に、大事な家族の為に皆で戦ったこと。
時に楽しげに、時に悲痛にまみれた表情で、時に哀しみに溢れた表情でルイズは語った。いつの間にかヴァリエール夫妻も時間を忘れて聴き入っていた。
その物語を語り終えるのには、それ程長い時間は掛からなかった。しかし、ルイズにとって、その時間は永遠とも呼べる程の長さに感じていた。しかし、それでハルケギニアに帰ってきました、と最後の一言を発した時、ルイズの中で永遠の時間は刹那の感情となった。込み上げてきそうな涙を堪えて顔を上げた。
「ルイズ」
よく頑張りました、とそう一言だけ発し。ヴァリエール婦人はルイズを抱き締めた。一瞬か、はたまた永遠か、そうしてルイズはじっと抱きしめられていた。
「さあルイズ、今日は疲れたでしょう。ただ休む前に、あなたの魔法を母に見せてくれますか?」
抱擁の時間は終わり、そっと離れたところで言われた母の言葉にルイズは静かに頷いた。
一度呼吸を整え、トゥースを持つ手に軽く力を入れる。そうした段階になって、ルイズは悩んだ。彼女自身が使える魔法はただ一つしかない、しかしそれは室内で使用するには少しばかり危険だと判断したからだ。トゥースの補助があれば他にも幾つか使用出来るモノもあるが、あまり見栄えがよくない上に自分自身の魔法だと言い切れなかった。
そして、いくらか悩んだ末に、自分自身が使える魔法がもう一つだけあることをルイズは思い出した。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
再び、その呪文は唱えられる。それはルイズにとって異世界に自分を連れ去った忌まわしきもの。だがルイズはそれに感謝していた、とても大切な欠けがえない出会いをもたらしてくれたそれに。
「5つの力を司るペンタゴン」
初め、異世界の杖を用いた魔法を見てみたいと思っていたヴァリエール婦人は、自分もよく知るその呪文を聞いて口を挟もうとした。しかし、開きかけた口がそ
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