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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
もしも 〜 其処に有る危機(1)
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難しい。間違っても制御が出来ないなんて状況にしてはならない。特に今は戦争が常態化しているからな、危険なんだ。俺を副司令長官にするなんて軍内部に爆弾を抱え込むに等しい。昭和の日本陸軍を見ろ、満州事変で完全に統制を失った。

俺は事変の首謀者、石原莞爾を全く評価しない。石原には私利私欲は無かっただろう。だが奴が満州事変を起こした事で、陸軍が奴を処罰しなかった事で日本は陸軍への統制を失い陸軍は軍への統制を失った。統制を失った軍などならず者の集団でしかない。そのならず者達が日本を破滅させた、そう思っている。石原がどれ程崇高な理想を持とうとも現実にやった事は日本を潰す爆弾を作っただけだ。同じ事をするわけにはいかん。

TV電話が受信音を鳴らしている。番号は……、ミュラーだな。受信ボタンを押すとスクリーンにミュラーの顔が映った。ナイトハルト・ミュラー、相変らず感じの良い男だ。何でこいつに恋人がいないのかさっぱり分からん。ルックス、人間性、地位、将来性、全部揃っている。俺が女なら放って置かないんだが。

『やあ、エーリッヒ。元気か?』
「ああ元気だよ」
『退屈してるんじゃないのか? 士官学校の校長なんて卿には物足りないだろう。皆心配している』
「残念だが忙しいんだ。軍の将来を担う人材を育てているんだからね。いずれ私の教え子から帝国軍三長官が出るだろう、楽しみだ」

ミュラーが困った様な表情をしている。強がりだとでも思ったか? 忙しいと言ったのは本当だぞ。シミュレーション偏重の教育を見直したいし軍事だけじゃなく政治、経済にも関心を持たせたい。特に同盟、フェザーンとの関係も理解させたい。戦争しか分かりませんなんて軍人じゃ困るんだ。

それにリヒテンラーデ侯、帝国軍三長官の爺様達にレポートを提出しろと言われている。内容は? と聞いたんだが何でもいいそうだ。役に立つなら使うという事らしい。好い加減だよな、もっとも爺様達は俺に自分達の下に居るんだと意識付けをしたいのかもしれない。犬と同じだな、飼い主を忘れるなという事だ。まあ色々と無理を聞いてもらったから無碍には断れん。レポートは提出するよ、役に立つかは分からんけど。

『楽しみか、好い気なもんだ。こっちの苦労なんて何も分かっていないんだな』
「何か有ったかな?」
大体想像は付く。だけどここはあえて無邪気に、そして能天気に行こう。帝国軍三長官からも大人しくしていろと言われている。世は全て事も無し、天下泰平、宇宙には愛が溢れている。あらら、ミュラーが溜息を吐いている。
『分かっているだろう、ローエングラム伯の機嫌は最悪だよ。毎日険しい表情をしている』

「ほう、変だね。ローエングラム伯爵家を継いで上級大将に昇進、宇宙艦隊副司令長官に就任した。本当は毎日が楽しくて仕方ないんじゃないかな。機嫌が悪い
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