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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
もしも 〜 其処に有る危機(1)
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宙艦隊副司令長官に就任するのは帝国では初めての事だって聞いた。実力を評価されての事、私だったら喜んで受けるけど中将は断った。理由は軍の統制を乱す、将来に禍根を残す、だった。凄いわ、断った事も凄いけどエーレンベルク軍務尚書とミュッケンベルガー司令長官を説得し押し切ったんだから凄い。

その後はとんでもない騒ぎになった。内示まで出ていたミュッケンベルガー元帥の退役とローエングラム伯の宇宙艦隊司令長官就任は急遽白紙撤回された。帝国軍三長官は大慌てでリヒテンラーデ侯と皇帝フリードリヒ四世に事情を説明して御許しを頂いたのだとか。宇宙艦隊司令長官職は親補職だから皇帝への説明が要る。帝国軍三長官は大分汗をかいたらしい。

そしてローエングラム伯は副司令長官への異動と格下げになった。噂ではローエングラム伯は面子を潰されたと怒り狂ったって聞いている。気持ちは分かるわ、でもね、その若さで副司令長官って十分凄いじゃない。これから上に行くチャンスは幾らでも有るんだし。そんなに怒る事は……、溜息が出そう。

そしてエーレンベルク軍務尚書から改めて中将に提示されたのが士官学校校長のポストと少将から中将への昇進だった。中将は少将のままで良い、校長じゃなくて教官で良いって言ったんだけどティアマトで戦った将兵達が納得しないから受けてくれと懇願されたんだとか。なんか軍務尚書が凄く可哀想。とんでもない部下を持っちゃったわよね。普通昇進を嫌がるとか有り得ないし。でも将兵達からは凄い人気。無私無欲の人、清廉潔白の人なんて言われている。

異動して一週間、ヴァレンシュタイン中将は毎日上機嫌だ、今日も楽しそうに書類を見ている。何でそんなに上機嫌なんだろう。妙な人だ、信頼しているし付いていこうという気持ちは変わらないが私にはこの人がもう一つ掴みきれない。宇宙艦隊副司令長官から士官学校校長、大将へ二階級昇進の筈が中将への復帰。何でそんなに喜べるの? 出世欲が無いのは分かるんだけど仕事が嫌いなわけじゃない。宇宙艦隊副司令長官の方が士官学校校長よりもやりがいのある仕事だと思うんだけど……。



帝国暦 487年 2月 7日  オーディン  士官学校校長室 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



ヴァレリーがこちらを見ている。何かを探る様な、訝しむ様な目だ。最近そんな目をする事が多い。多分、俺が仕事を楽しんでいるのが疑問なのだろう。気付かない振り、気付かない振り。その通りだ、俺は士官学校校長という仕事を楽しんでいる。敵を殺す事を考えなくても良いし補給で頭を悩ませる必要も無い。ラインハルトの下で副司令長官なんて罰ゲームに等しいポストに比べれば薔薇色に輝くポストだ。仕事は楽しくやらなくては。

それに俺を優遇するなんて事は有ってはいかんのだ。軍というのは暴力装置だ、それだけに扱いが
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