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Absolute Survival!! あぶさばっ!!
第三話 覚悟と決別
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、『奴ら』が琉の足首を掴もうとしたところで、
「おらぁッ!」
琉は腕力で身体を浮かし、ありったけの力を込めて『奴ら』の顔面へと蹴りを入れた。
蹴りは見事に『奴ら』の顔のど真ん中を捉え、『ゴギン』という嫌な手応えと共に顔へめり込む。
そしてすぐさま琉は両足で『奴ら』の手甲を踏みつけ、格子状の溝蓋から手を離した。
首が変な方向に曲がり、じたばたともがく『奴ら』。
琉は咥えていたペティナイフを両手で握りしめると、渾身の力で『奴ら』の頸椎、つまり顎の下へ突き刺した。
肉を引き裂く感触がペティナイフから伝わり、吐き気がこみ上げてくる。しかし琉は嘔吐しそうになるのをグッと堪え、頸椎に刺していたペティナイフを真横へ掻っ捌いた。
ペティナイフの刃は『奴ら』の首を半分以上切り裂き、そこから真っ赤な鮮血が噴水のように噴き出す。
「アァあアアぁッ……。ァ………」
琉に喉切りをされ、『奴ら』の眼球はグルンと上を向き、身体中をビクンッビクンッと痙攣させながら力無く崩れ落ちた。
ピクッ、ピクッ、と微かに動く『奴ら』の亡骸を見下ろしながら、琉はペティナイフに付着した血液を服の裾で綺麗に拭き取り、腰に差し直す。
「…………」
真っ赤なシャワーを浴びて身体中がベトベトだ。
幸運なことに、どこも怪我はしていない。残ったのは、直接殺してしまったという罪悪感にも似た嫌悪感と、肉を引き裂いた時の不快感だけだ。
気分は最悪。
自分の血に濡れて震える掌を見つめ、そっと目を閉じる。
こんなんじゃ、ダメだ。
『奴ら』を殺したくらいで、こんなにも動揺していたら、ダメだ。
これから先、こんなことがもっと増えてくるだろう。
そんな時にいちいち動揺していたら、いつかきっと殺される。
慣れなきゃ。
慣れるんだ。
琉はグッと奥歯を噛みしめ、様々な感情を押し殺すように拳を握りしめる。
爪が手に食い込み肉を裂くが、気にしない。これは決別なのだ。
殺す覚悟。それに慣れてしまう覚悟。
もう戻れない。人としての常識の範疇に居た自分には、もう戻れないのだ。
琉は目を開け、もうピクリとも動かない『奴ら』へ視線を送る。
「俺は……こうはならない。絶対に。絶対に」
琉は自分に言い聞かせるように呟き、踵を返してこれから進む道を見据える。
進む道、いや街渠の中は薄暗く、延々と奥まで続いている。
目的は『袴田颯』を見つけること。今はそれだけを考えていればいい。
琉はやけに重たく感じる足を踏み出し、暗闇への前進を再開した。
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