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Absolute Survival!! あぶさばっ!!
第三話 覚悟と決別
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幸運なことに、街渠の中に『奴ら』の姿はない。
しかし、街渠の上、つまり地上では無数の『奴ら』が闊歩し、蠢いていた。
街渠の上部には隙間なくコンクリート製の側溝蓋がしてあり、一メートル毎の感覚でグレーチングがしてある。グレーチングとは、あの格子状に組まれた溝蓋のことだ。
そのグレーチングから見える街の様子は、既に混沌としたものになっていた。
炎に包まれた家々、死体を貪る『奴ら』。まだ生存している人は何人か居るようで、叫び声を上げながら『奴ら』から逃げ回っていた。
まさに、この世の終わりのような光景。
琉はなるべく上を見上げないようにしながら、歩を進める。
しばらく屈んだ姿勢で歩くと、琉は何かぬるっとした液体を踏んだことに気が付く。
薄暗くてよく分からないが、どうやらそれは血のようだった。
なぜこんな場所に血が、と思い首を傾げると、目の前で「ぽちゃん、ぽちゃん」と血の水たまりに滴が垂れている。
そっと琉が上を見上げると、そこはグレーチングがしてあり、その真上で一人の男が項垂れるようにして座り込んでいた。
男から垂れ流しになっている大量の血が、目の前の街渠を真っ赤に染めている。
「…………。死んでる……のか?それとも、」
奴らになっているのか、と言いそうになる言葉を慌てて飲み込む。
というのも、真上に座り込んでいる男の左腕が、ビクンッと飛び跳ねたのだ。
飛び跳ねた、というのは決して語弊なんかではない。
まさに魚が陸でのたうつように、ビクンッと飛び跳ねたのだ。
「ア……ぁアあぁぁ」
「―――っ!」
座り込んでいた男の首が、ガクンと琉が息を潜めている格子状のグレーチングへと向く。
焦点の合っていない眼、涎をだらだらと垂れ流す半開きの口。
男と真正面から顔を合わせてしまった琉は、背筋に氷を流し込まれたような、ゾッとした感覚に襲われた。
この感覚は、よくバトル物の作品なんかで出てくる、あの感覚に近い。
そう、殺気だ。
殺気なんて味わったことが無い、というのはよく分かる。しかし、こんな場面を想像してくれれば分かりやすいかもしれない。
例えば、虎が数匹いる檻の中に放り込まれたとしよう。
そして放り込まれた自分と言う『エサ』に気が付き、虎たちはその獰猛な口を開けて今にも捕食しようと迫ってきた時。
そんな、死を覚悟するほどの恐怖―――それが殺気の正体だ。
琉は真上を見上げて硬直したまま、男の顔から目を逸らすことができなかった。
目を逸らせば、殺される。
喰われる。
これは直感なんて生易しいものではない。
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