13部分:第十三章
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第十三章
「奈良じゃからのう」
「だからその土蜘蛛か」
「そういうことじゃ」
これが老人の言葉であった。
「さあ。次は」
次々に出してくる。鵺に濡れ女に牛鬼に。恐ろしい妖怪ばかり出してきた。忽ちのうちに間を取り囲み動けなくしてしまうのであった。
「さて。取り囲んだぞ」
「そうか」
「そうかか。余裕じゃのう」
「絵から生まれた妖怪だな」
間は画伯のその怪しい笑みを聞いてもまだその余裕と言える態度を崩してはいなかった。
「ならば」
「ならば?」
「相模君」
間はここで相模に声をかけてきたのだった。
「相手は絵だ」
「絵ですか」
「そうだ。わかるな」
「それなら楽勝ですよ」
鬼と戦い続けている。かなり押されてはいる。鬼が振るう金棒を刀で防いでいる。どう見ても力負けしているのは明らかであった。
「絵ならね」
「言っている意味がわからんが」
「絵ってのはな」
相模は不敵な笑みと共に言う。
「致命的な弱点があるんだよ」
「弱点じゃと?天才のわしの絵に」
「絵は絵なんだよ。なら」
「やるぞ」
「はい。これでっ」
ここで二人は同時に剣を一閃させた。だがただ一閃させただけではなかった。見ればその刀には赤いものが宿っていたのだった。それは。
「なっ!?それはまさか」
「そうさ。俺達はただ刀を操れるだけじゃないのさ」
「こうした力も持っている」
二人はそれぞれ言った。
「こうしてな。刀に炎を宿らせることもできるんだよ」
「絵は紙に描くもの」
相模と間はここでまた刀を振るった。その炎が妖怪達に触れると彼等はそれだけで燃え上がり消え去って行く。そうして画伯に次第に近付いていた。
「なら炎には弱いよな」
「紙ならばな」
「おのれ・・・・・・」
「さて、観念しな」
相模は摺り足で画伯に対して近付いた。既に二人との間には何もいはしない。
「もう終わりだぜ。幾ら描いてもな」
「まだだ。まだわしは」
画伯は血走った目で言うのだった。
「描くのだ。絵を」
「そうかい。それがあんたの意志なんだな」
「左様。だからこそ」
彼は言うのだった。
「ここで倒されるわけにはいかんのだ」
「そんなことは好きに言っておくんだな」
「少なくとも今まで捉えてある女性達は解放させてもらう」
間も間合いを詰めていた。二人はそれぞれ構えを取っている。
「ここでな」
「わしは。わしは」
その間合いを詰める二人に対して画伯はさらに血走った顔を向けていた。
「どうしても。まだ描くのだ」
「むっ!?」
「何だ!?」
ここで画伯の姿が暗い何かに覆われた。そしてその後で彼は。得体の知れない黒い不気味な存在になってしまっていたのだった。
「何だこいつは!?」
「まさかとは思うが
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