第161話 蔡平
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と蔡平の所作は礼法に全く叶わないと考えているのだろう。
「お前が蔡平だな。伊斗香からは話を聞いている。そこでは顔が見えん。もう少し近くに来い」
正宗は温和な雰囲気で蔡平に声をかけた。蔡平は顔を上げ伊斗香の横にのろのろと移動し同じように平伏した。伊斗香は蔡平の動きにあたふたしてした。
「蔡平、面を上げよ」
蔡平に正宗は声をかけるが頭を下げたままだった。
「蔡平、顔を上げ清河王に顔を見せなさい」
見かねた伊斗香が蔡平に声をかけた。その様子を見て正宗は蔡平が満足に教育を受けていないだろうと推察した。正宗が二人のやりとりを見ていると蔡平が顔を上げた。彼女の顔の右側に酷い傷跡を発見した。かなり前につけた傷のようだ。傷自体は治っているが酷い傷であったことを物語っていた。
「蔡平、お前は自分の父を殺したいそうだな?」
「彼奴を殺せるんですか?」
蔡平の両目に強い怒りの炎が映っていた。その様子を見て正宗は蔡平がいかに実父を憎悪しているのか理解した。彼女からは実父への明確な殺意が感じ取れたからだ。
「教えてくれ。お前は実の父を殺して後悔しないのだな?」
正宗は蔡平に気遣ってか分かりやすい言葉を使い質問した。
「後悔? 後悔する訳がない! 彼奴に何もかも奪われた。彼奴も、その家族もみんな死ねばいい!」
正宗の言葉に蔡平は感情を露わにして憎しみの言葉を口にした。正宗は彼女の実父と村人達への憎悪しか感じさせない表情を見て沈黙した。
「お前の気持ちは分かった。私が蔡徳珪を殺せと命令すれば、お前は蔡徳珪を殺せるか?」
正宗は蔡平に確信の質問をした。その時、蔡平の表情に一瞬だが戸惑いを見せた。それを正宗は見逃さなかった。
蔡平は蔡一族を憎悪しているのではなく、彼女の住む村の者達を憎んでいる。もしくは蔡平は蔡瑁から影ながら援助を受けていたことを自覚している。あるいは彼女自身確信はないが、蔡瑁が自分を援助しているのでないかと思っている。いずれであろうと彼女は蔡瑁への遺恨はないことになる。
「お前は蔡徳珪を殺せるか?」
正宗はもう一度蔡平に聞いた。
「殺れます。蔡徳珪を殺します!」
蔡平は正宗に必死な表情で返事した。正宗の申し出が彼女の願いを叶える交換条件と思ったのだろう。正宗に突き放されることを恐れたように焦った表情で答えた。
「蔡平、人を殺したことはあるのか?」
蔡平は正宗の問いに沈黙した。正宗はそれを否定と受け取ったようだ。彼は蔡平を間者として利用することを断念したように見えた。
「蔡平、お前の願いを叶えてやろう。その代わりに私に襄陽城の話を教えて欲しい。それと、襄陽城の行き様子を私に教えて欲しい。で
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