第161話 蔡平
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。それでも紗耶夏は満足そうに礼を述べた。
正宗は戦後処理を終えると本陣を後にし、自分の陣屋に戻っていた。彼は自らの椅子に深々と腰をかけると目を瞑った。
「清河王、お休みのところ申し訳ございません。?慈度様がお越しになりました」
正宗付きの近衛が陣幕を潜り、正宗に声をかけてきた。
「通せ」
正宗はを目を開け伊斗香を中に通すように言った。彼の許可を受け陣屋の中に伊斗香が入ってきた。
「伊斗香、どうしたのだ?」
「蔡平の話で参りました」
「蔡平に接触するために行くのか?」
「既に接触してまいりました。黄承彦殿の夫と息子の巡検の帰路に秋佳と別行動を取りました。事後ですが独断の行動をとったことお許しください」
伊斗香は正宗に拱手し深々と頭を下げ謝罪した。
「別に構わん。それで守備はどうなのだ?」
正宗は伊斗香に報告を求めた。
「少々予定が狂いました」
「どういう意味だ?」
正宗は伊斗香の返答を受け彼女を訝しむ。彼女の表情からは蔡平との交渉が失敗した様子には見えなかった。
「蔡平は正宗様への目通りを求めております」
伊斗香は正宗に申し上げ難そうに言った。
「口約束では信用できないか。当然だな。そうではないと使い物にならないだろう」
「蔡平とお会いくださるのでしょうか?」
伊斗香は正宗の心情を探るような視線を送り確認するように聞いた。貴人である正宗が庶民から面会を求められても通常は会う訳がない。彼女が言いづらそうだった理由はそこにあったのだろう。しかし、正宗は不愉快な様子は微塵もなかった。
「会おう。数日後には蔡平の住む村を襲撃するのだ。今、会っておいた方がいいだろう」
「畏まりました。蔡平は陣幕の外で待たせております」
「準備が良いのだな」
「あまり時間もございませんし、蔡平を間者として使うのであれば早いに越したことはないと思いました」
「通してくれ」
「蔡平、清河王のお許しをもらった中に入れ」
伊斗香は陣幕の外に向けて声を上げた。すると女が一人入ってきた。髪の毛は黒く、その長さは短い。彼女の服装は小作人のようなぼろい木綿の服だった。その服は所々修繕しているようで継ぎ接ぎ目立つ。服から見える手足は痩せていた。しかし、彼女の手足の筋肉のつき方から、正宗は彼女が鍛錬を欠かしていないことに気づいたのだろう。正宗は彼女を見る視線が変わった。
女は礼法に疎いのか、たどたどしい動きで伊斗香の後ろの方で両膝を地面に着くと正座の状態で正宗に対して平服した。
「清河王、蔡平の無作法お許しください」
伊斗香は正宗に対して拱手して謝罪した。
「構わん」
正宗は蔡平の態度を気にした様子ではない。伊斗香からする
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