第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
誰かの記憶:微睡を醒ます曙光
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なお友達が出来たんです。ここからクーネさんと一緒に抜け出して、あの浮遊城に戻らないと、私は死んでも死に切れません。今思えば、あの時リンさんに会うために、ヒヨリさんやアルゴさんに会うために、そしてクーネさんに逢うために、きっと、私は生き返ったんです。ここに来る前にリンさんも言ってました。《一度成功した事が、もう二度と成功しないなんて確証はない》と。全てを諦めてしまった私に言ってくれたんです」
「クーネさんは、諦めるんですか?」と、問いかけを以てティルネルさんは言葉を終える。
答えは否だ。諦められる筈なんてない。もう一度、レイやリゼルやニオと一緒に過ごしたい。ティルネルさんのお友達という人達にだって会ってみたいし、お姉さんに会ってみたいという願いも偽りのないものだ。これだけ、未練が生まれてしまったのだ。それこそ、潔く死を受け入れてなどなるものか。往生際が悪くとも、私は生きたい。その先をもっと見たい。
「諦めたくないんですよね?」
「………私は、仲間達の許に行かなくちゃいけないんです。あの子達を置いてなんて逝けない………生きなくちゃいけないんです!」
「そう、ですよね」
気付くと、視界が潤んでいた。ティルネルさんは涙混じりの私の叫びを真正面から受け止めて、相も変わらない優しい声で答えてくれた。そして不意に強く胸元に顔を引き寄せられる。抱き締められたと認識が追いつく頃には、ティルネルさんの隙間から覗く白い空間が僅かに光を放っているような、そんな幻視が映ったような気がした。
「………よく、出来ました」
より一層きつく抱き締めながら、ティルネルさんはそっと私の頭を撫でる。安心させるように二度、三度と髪を撫で下ろす。
「帰り―――。み-な――――――………」
頭を撫でられて幾度目か。意識がふと遠くなるような感覚が訪れる。ナーヴギアを起動した時と似たような浮遊感に似たそれは、私の意識を確かにさらっていった。
――――最後のティルネルさんの言葉を、掻き消しながら………
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