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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
誰かの記憶:微睡を醒ます曙光
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かるし、この人は優しいだけじゃなくて、本当の意味で気に掛けてくれている。偶然出会ったような私にさえ、こうして気遣ってくれているのに、まるで値踏みするように観察ばかりしている自分が少し恥ずかしくなってきた。最近は自分に嫌気が差す事が多くなってきた気もするが、この際は気にしないでおくとしよう。


「………そうですね。私もティルネルさんの事をもっと知りたいです」
「………良かったぁ………クーネさん、ずっと気難しそうでしたから、断られるんじゃないかと………」
「いや、そんな事は………というか、私そんな顔してたんですか………?」


 無言でおずおずと頷かれる。諦めたようでいて、この状態に最も不安がっていたのは自分だったのかも知れない。と、深く考えるのも無駄にしかならない。後ろ向きな思考の無意味さは、ティルネルさんを見れば良く分かる。

 とりあえず、目下の疑問は横へ置いて、ティルネルさんと会話をする。会話と硬めの言い方をしても、内容はティルネルさんの身上話や交友関係といった世間話や、友達――――話を聞く限りプレイヤー、しかも女の子――――から聞いたり、記憶で垣間見た《外の世界(リアル)》における情報の中で、ティルネルさんが興味を持った話題なんかを掘り下げただけの他愛もない会話。文化というか、設定というか、根本的な《見てきた世界》が違うだけに話題も受け答えに困るような内容の話題も幾つかあったけれど、それでも気兼ねなく話せる。誰かが傍に居るというだけで、麻痺していた感情の起伏が蘇っていくような感覚を実感しながら、ついつい時間も忘れて話し込んでしまう。


「すごいお姉さんなんですね」
「騎士としては尊敬できるんですけど、女性として振舞って欲しいというか………」
「でも、羨ましいです。私は一人っ子だから、姉妹や兄弟にずっと憧れてたんです。それに、ティルネルさんみたいな優しい妹がいたら、私だったら可愛くてずっと傍にいちゃいそうだなー」
「うぅ、私は別に優しくなんか………」
「お姉さんの話になるとずっとそればかりなんですもん。楽しそうだなって羨ましくもなりますよ。お姉さんに会ってみたい………でも、会えるのかな………」


 ティルネルさんのお姉さんに会ってみたいという、その気持ちに偽りはない。
 しかし、無理だとも、同時に思う。この白い空間に囚われている以上は、私はどこに行くことも、何をすることも出来ない。それどころか今こうして生きているのかさえ不明瞭な状況で夢を持ってしまう事に、未来に希望を持ってしまう事に、明確な恐怖を感じる。叶わない願望を抱いてしまうほど、辛いものはきっとないのだから。



「………という事は、クーネさんも、ここから出ないとですね」
「だって、ここは………」
「出られますよ。私にはもう三人、大切
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